順慶

旅立つ息子への順慶のレビュー・感想・評価

旅立つ息子へ(2020年製作の映画)
4.0
気になっていた作品。イスラエルの映画だったんだ。直前まで知らなかった。

実は(というほどのことでもないが)、私はADHD(グレーゾーン)と診断された息子の親なので、ちょっとこういう内容は身につまされる。息子は映画のウリとは、まったく違うが、こいつはうまく周りから理解されるだろうかと心配していたが、もう高校3年生になった。

で、とにかくこの映画は、父アハロンと自閉症の息子ウリの関係が最高で、ウリを施設に入れることが、よくないことのように描いていく。
観客の感情もアハロンによっていく。

駅のホームでウリが暴れだしたときの手のつけられない感じ。ドキュメンタリー的に長尺のシーンで、ハラハラした。
また、ふとウリがいなくなって、探すアハロン。カメラはアハロンに寄りそい、周りはボヤけさせ、不安感を観客に与える。

ウリは、父親としか接したことがなく育ってきた。だから旅先で、知らない(ちょっと怖そうな)にいちゃんに、「水(ペットボトル)をとってくれ」と頼まれるだけで、変な緊張感があった。心配そうに見つめるアハロンの気持ちが、伝わる。自分で取れよと思ったけど。

ウリは、イヤなことは伝えられるが、スキなことは分からない。だから、「星型のパスタが好き?」「黄色が好き?」と自分の好みを他人にゆだねる。そして「好きだ」と言われて安心して行動できる。

自動ドアのボタン。最高のラストだった。

で、我が息子のことを冒頭に書いたので、誤解されないようにフォローしておくと、天才ではない「僕と世界の方程式」の男の子のような感じ。
社会性もうまれ、自分に合った生き方を模索している。脳波の検査もして、ADHDの傾向が強いと診断されて、息子はすっきりした感じだった。
彼なりに旅立ってほしいと、父親の私は見守りたい。
順慶

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