ぴのした

もう終わりにしよう。のぴのしたのレビュー・感想・評価

もう終わりにしよう。(2020年製作の映画)
3.8
おしゃれな不条理映画。詩的な会話劇と、現実が徐々に常軌を逸していく不気味さが面白かった。

ゲットアウトや、ダーレンアロノフスキーのマザー!を彷彿とさせる、いや~な感情が高ぶっていく展開が好きな人にはたまらない。

訪問したのになかなか現れない両親、ふさがれた地下室、延々と震える犬、だれも手をつけない食事(それを黙々と片付ける主人公も怖い)、話している内に次々に代わる主人公の専門、2人の出会い、主人公の名前…。

思うにこれは、ところどころ出てくる年老いた清掃人のジェイクによる妄想の物語のように見える。

自分の学の高さや恋人がいることを両親に認めてもらいたい。けど、現実はそうはいかない。頭の中で何度も何度も、いろんなところで目にしたきれいな女性たちを実家に招く想像をする。だから彼女たちは何度も名前が変わり、趣味や出会いが変わる。彼女たちが話す言葉や絵は、ジェイクが知っている物の中からしか出てこない。

でもジェイクは結婚したことはないし、その先を想像できない。だから最後は毎回学校に戻ってきてバッドエンドを迎える。ゴミ箱には「いつも甘さを忘れて買ってしまう」アイスのゴミが山積みになる。そんな妄想を「もう終わりにしよう」と思っているのはジェイク自身だ。

これをあえて彼女目線から語ることで、不気味映画として確立させているのがうまい。ラストの豚や、変なメイクの発表会も面白い。これを「こういう映画はこういうものだよね」、と楽しめる人には極上の出来ではないか。