FutosiSaito

シュシュシュの娘のFutosiSaitoのレビュー・感想・評価

シュシュシュの娘(2021年製作の映画)
3.6
 その志に星ひとつ追加、入江悠監督の故郷・深谷を舞台に、ゆるく描いた地方活劇かつ不思議な映画だ。
 まず福田沙紀、ちょうど一年前の8月末をもってオスカーを退社しフリーになった。三池崇史監督の『ヤッターマン』では2号を演じ可愛かった、その福田が常に猫背で微妙なダンスを踊ったりする地味な公務員を演じている。
 入江監督は地方シアターのために、またコロナ禍で仕事のない映画人のためにこれを企画した。もちろん自主映画として。
 だから公文書偽造という社会派なテーマながら、『新聞記者』のように直球を投げない。あくまでもゆるく、柔らかくほのめかす。
 だからファンタジーでいいのだ。勧善懲悪ふうで。
 『サイタマノラッパー』で驚異的なクオリティを見せた(特に『〜3』)入江監督が、こういう作風にしているのだから、これでいいのだ。
 『ビジランテ』で外国人排除と、自警団の恐ろしさを硬派に描いた監督がこうしているのだから、これでいいのだ。

 この映画も『サマーフィルムにのって』同様に、音楽のチープさが日活ロマンポルノみたいで懐かしかった。ロマンポルノこそ、自主制作的であり、実験場であり、若い監督の情熱がこもっていた。
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