たく

私をくいとめてのたくのレビュー・感想・評価

私をくいとめて(2020年製作の映画)
4.0
映画館で観ようか迷って結局観そびれたんだけど、ちょっと後悔するくらい良かった。のんの全編ドアップの柔らかい映像から魅力が120%溢れててくぎ付けになったし、もうほとんどアイドル映画と言っていいくらい。話としても「おひとり様」を言い訳に人と向き合うことを避けてた女性の成長物語になってて、たぶん彼女の映画出演での代表作になるような気がする。もちろん「この世界の片隅に」は最高なんだけど、実写でこれといったのがなかったので本作との出会いは嬉しい。

孤独をこじらせた女性が自問自答から一歩進む話が、同じ綿矢りさ原作、大九明子監督による「勝手にふるえてろ」を思わせて、同作で松岡茉優のハマり役を見ちゃってるんでどうかなーとあまり期待せず観たらこれがまあ良かった。のんの今まで見た演技でいちばん素の感じが出てて、前半のイタい女子が中盤の温泉旅行で見せる迫真の演技で一気に引き込まれたし、喜怒哀楽の演技が実に自然。つい最近観た「星屑の町」が微妙だったのであまりの違いに驚いちゃった。

のんを支配する水のイメージとイタリアでの橋本愛の太陽のイメージが対比されて、「あまちゃん」はちゃんと見てなかったけど二人の現実世界での久々の再会を象徴するような涙のシーンは本当に泣いてるみたいだった。ここで橋本愛がやっぱりドアップで撮られるんだけど、太陽光にさらされてほとんど白飛びする彼女の目鼻立ちのはっきりした西洋人的な顔立ちが、イタリア人家族の会話にちょっと出てくるソフィア・ローレンみたく一瞬見えたのが印象的。

中盤の飛行機のシーンが余計かなーと思ってたら、後でちゃんと回収されるのが上手い。
Aの存在が「ブルーアワーにぶっ飛ばす」のキヨを思わせたのと、片桐はいりがちゃんとバリバリのキャリアウーマンに見えるのが改めて役者ってすごいと思った。
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