Habby中野

ノマドランドのHabby中野のネタバレレビュー・内容・結末

ノマドランド(2020年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

自分のことを川に落ちた卵の殻だなんて思うことはない。生まれたのが自分なのかもしれない。
社会からはみ出した人々が社会にぶらさがって”自由に”生きるのがノマド、ではない。いつから人をはみ出させるほど社会は誤膨張しまったのだろう。人々が生き、そこに小さな人生が集まる。人と人との間に何かが生まれる。微笑みあったり焚き火を囲んだり。これはもう社会じゃないか。逸脱、とかそんな高みから見ても仕方ないしべつにこれが自由でもない。働いたり作ったり壊したり、食べたり笑ったりなくしたり。家族の下に戻ったり─家族は一番ちいさな社会だ─家を引き払ったり。巨大な何かから逃げ切ろうとも、諦めて迎合しようとも、する必要はない。わたしのいるここが世界だ。この周り、少し遠かったり近すぎたりもするけれど、そこに誰かがいたりするなら、それが社会だ。引き払った家の裏はずっと砂漠だったように、原風景というものは幻視するものでも懐古するものでもなく、つねにここにあるんじゃなかろうか。
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