【DCも面白くなりそうだと思わせる秀作】
バットマンとワンダーウーマンシリーズは観ており、Shazamも一通り鑑賞。（Shazamは出てないけど）MCUに比べると目立たない印象であったDCもかなり面白くなるのではという予感が高まった。
マルチバースというよりは、本作はタイムリープ作品として観た方が素直であろう。確かにタイムリープをすることで過去を変え、未来が分岐することでマルチバースになると言えばそれまでだが、MCU系のマルチバースやエブエブのマルチバースと比べると全然複雑なものではない。
本作の肝となるのは、修復不可能点（irreversible point）を見つけるということである。タイムリープを繰り返して、未来の可能性を無限に変えられそう…となると自分の下した決断が「ゲーム性」（やり直しできるんだから何度もトライしようという意味での）を帯びてしまい、イマココに集中出来なくなってしまう。マルチバース世界を突き詰めた先にある虚無とも肉薄する、所在なさに陥るということである。
その点、修復不可能なポイントがあるということは、運命を受容し、現在を肯定しながら生きるという解を提示しているようにも見える。
本作は「過去に戻れるなら…」と誰しもが思う問いに対して、そう夢想できる今のあなたが今のあなたであるのはまさに後悔のあるポイント（修復不可能点）であるのだという、世知辛い現実を肯定的に捉えさせてくれるようなエールを送る作品でもあった。
DCコミックスの小ネタまでは拾いきれなかったが、仮に分からなかったとしても観客を置き去りにしない丁寧な作りであったことも好感が持てた。個人的には、ノーラン監督の三部作のバットマンが好きなこともあり、別次元のバットマンではあるが彼が活躍してくれたのは嬉しかった。
