ノラネコの呑んで観るシネマ

ベイビー・ブローカーのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)
4.3
前作の「真実」もそうだったが、是枝裕和は世界のどこで撮っても是枝裕和。
これも彼が、家族のあり方という普遍的なテーマを追い続けているからだろう。
赤ちゃんポストに捨てられた赤ちゃんの、違法養子縁組をしているソン・ガンホとカン・ドンウォンの元に、赤ちゃんの母親のイ・ジウンが現れたことから事態が動き出す。
ペ・ドゥナとイ・ジュヨンの刑事も含め、本来家族愛とは真逆の位置にいる人々が、赤ちゃんを媒介にして擬似家族になって行くのは「万引き家族」にも通じる時代性。
現実がどんなに厳しくても、最後には人間の善性を信じるのもこの人らしい。
しかし、やはり外国で撮るのは勝手が違うのか、日本で撮ってる時と違って脚本の欠点が分かりやすい。
プロットが無駄に複雑で、例えばヤクザの妻が赤ちゃんを探してる設定は無くても成立する。
ヤクザの子分が、ソン・ガンホの知り合いなのも御都合主義に感じてしまうし、子を捨てる母親に厳しいペ・ドゥナの内面は描写不足だ。
キャラがむっちゃ表層的だった「真実」ほどでは無いが、文化的に近い韓国でも、よく知らない社会を舞台に物語を構築するのは難しいのだろう。