やーたん

ベイビー・ブローカーのやーたんのレビュー・感想・評価

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)
4.2
大好きな是枝作品
大好きな人しかいないメインキャスト
大好きな韓国作品
もう情報解禁からずっと楽しみで、有給取って初日の朝から観に行きました。

是枝監督のやりたいことが、思いっきり出来る環境だったんだなと、勝手ながら感じて、それがまずはすごく幸せでした。



上手く言葉に出来なさすぎて、自分の語彙力のなさにへこんだけれど、でもたぶん、言葉で感想を言わせるのが目的の映画ではなく、むしろ私みたいな反応はおかしくないんじゃないか?と思うくらい、なんだろう...観る側に与えるもの、残すものがすごく独特でした。(褒め言葉です)
考える映画でも、感じる映画でもない、染み渡る映画。
もちろんとてつもなく考えさせられるけれど、
考えても答えは出ないし、答えはないんだと痛感する。
それでも、温かさがそこにはあって。
何が正しいのかわからず、それこそ生きている意味もわからなくなってしまう世の中で、
自分が生まれてきたことだけは間違いじゃないということ、その事実が観た人を包み込んで、思考を停止させて、ただただ涙だけが流れる。
これが答えだ これが正しさだ とかいろいろ言う人たちを黙らせる。
それから、倍速で観たり飛ばしながら映画やドラマを観る勢をとことん排除する作品だと思った。

前作と比べると、万人受けではないと思います。



洗車シーンからずっと泣いてて、どうしようかと思った。
涙が止まらなかった。
ずっとずっと涙が出ていて。
涙がぼろぼろ出るというか、ずっと目の周りが濡れ続けている感じ笑
本当にずっと温かかった。

観覧車のシーンは歴史に残るレベルの名シーンかも。
あのやり取りが遊園地で行われることは、すごく意味があったと思う。
明日はやってくるけど、今は少しくらい、夢見ていたい。


トンネルのシーンは上手いとしかいえなかったし、
KTXが出てくるのがそもそも珍しい気がした。
『釜山行き』くらいでしか見たことない笑




ソン・ガンホはもう世界の宝です。
カフェのシーン、苦しかった。
いちいちいい。いちいち。全部。
そりゃ、この人で映画撮りたくなるよ。
やっと世界で賞をとって、本当によかったです。
是枝監督の作品で というのもすごく嬉しい。

カン・ドンウォンは、
もう彼のずっと平熱を保っている空気感が本当に良くて。
でも、触れると冷たく、触れられると温かいような。
気持ち悪い話ではなく、彼の体温を感じられるような不思議な感覚でした。
あとは普通にファンなのでスクリーンで見れて嬉しかった...顔が本当にいい(ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい)

あいゆたんは10年以上の強火オタクをやっているので、映画館のスクリーンで見れたことも、声を聞けたことも、本当に嬉しかった。
でも、贔屓目なしで本当に素晴らしかったです。
あの声が本当に映画に味を出していて、気だるさもシーンごとの表情も、すごく絶妙。
あと、言わせてください。
松岡茉優には似てないよ💢

ヘジン少年は、おいおい厄介なのついてきたぞ大丈夫か?とか思っていたけれど、もう最高。
上手すぎ。
ちょっと聞こえる言葉になってないくらいの声だけでも愛おしくなったしいちいち涙が出た。
子役の使い方ほんと上手い。ずるい。

そして刑事側の2人ですが、
ものすごく大事な存在・視点だったと思う。
後半のペ・ドゥナのセリフで、この2人のシーンの価値が全部理解出来た。
重要じゃないようで、ものすごく重要。
あの2人はブローカーたちを見ていく中で、今まで知らなかった社会・人間の一部を知っていくんだよね。
その様子が、観ている私たちと近い距離感だった気がして、そういう視点を設けることで、
ブローカーたちと観客の間に絶妙に存在し続ける空気のような存在だったかも。
空気のような存在 というのは悪口ではなく、
そのくらい本来見えるものとして描かれないものを描いているというかなんというか...
はぁ、語彙力がほしい.....

あと、韓国ドラマ好きの私としては、
2人の咀嚼音はむしろよかった。
車の中ってその音だけが響いたりするし。



少し考えて気づいたのは、
全体を通して所々曖昧なところがあったのは、
やはり安易に個人で答えを出させないため・白黒はっきりさせないため なのかなと。
たとえば、この人にはこんな過去があったなら仕方ないか!この人は悪くないです!(答え)みたいな。
そんな簡単な問題ではないし、答えはわからないんだと、答えを出すことが目的の映画ではないんだと感じた。
だから、納得出来ない人がいていいんだと思う。



それにしても、是枝監督は本当に役者の使い方が贅沢!!!!!!!
誰が出てくるのかは知らないで見た方が楽しいと思うので言わないけれど、
知ってる人が山ほど出てくるし、使い方が贅沢すぎる。
これだけの人が参加してくれるその力に感動しました。

それから、別に字幕なしで見れるほどめちゃめちゃ韓国語が出来るわけではないけれど、
字幕がわりと話していることに忠実でよかった。
これこういう言い方に変えちゃうんだ...みたいなのがなかった気がする。



万引き家族が過ぎったり、比較している人が多いけれど、
私は、万引き家族の方が作品としての形がしっかりしていて、伝えたいこともわかりやすく、観る側の気持ちや反応(他人ではなく自分の)もわかりやすく、わりと多くの人がいわゆる''よかった''と思える作品だったと思う。
それと比べると今作は、完成度が落ちたように感じるかもしれないけれど、本当はさらに先に進んだ作品なんじゃないかと思う。
本当に上手く言えなくて悔しいのだけど、決して劣ってはいない。


電気を消すシーンに涙を流せたのは、
自分が幸せだからなのかもしれないと、感じたりしました。

あとはその時の、髪をぐしゃっとするソン・ガンホは、万引き家族の安藤サクラの涙を拭う仕草と重なった。
シーンも心情も違うけれど、
全力で人間 という感じがして、愛おしくて、苦しくて、絶妙で、ちょっと天を仰ぎました。
ああいう演技って、しようと思っても出来ない。
細すぎてすみません。伝わる人いるかなぁ...


そうだ、あと、音楽、めちゃめちゃよかった。
序盤からそれはすごく感じました。




.....という感じで、
感想をまとめるのに1日かかってしまった笑

私の感想は、あくまで私が感じたこと、解釈であって、これもきっと答えではないです。



韓国作品ならではのスタッフの熱量と、
是枝作品の魅力が詰まった作品。
こんな贅沢な作品なかなかない。

是枝監督、これからも素敵な作品、楽しみにしています。

『歩いても歩いても』を観たくなる季節になってきたな🌽
やーたん

やーたん