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ベイビー・ブローカーのmiiのレビュー・感想・評価

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)
3.8
ベイビーボックスの前に赤ん坊(ウソン)を捨てたソヨン。
彼女を見ていて
どんなに綺麗事を言っていても
所詮 貴女は子供を捨てたんでしょ!と思ってわたしは観ていた。

女性刑事の執拗な食事のシーン
あのクチャクチャ音が 嫌だった。
今思うと あれは嫌悪感を抱かせる是枝監督の演出だったのでは?とも思う。

赤ん坊を売ろうとしているサンヒョンとドンス。
ドンスは 母親に捨てられ 児童養護施設で育った過去を持つ。
ドンスの育った施設からこっそり抜け出して彼らに着いていき
自分も引き取られてほしいと願っている子供のヘジン。
そして ソヨン。
大人3人+子供1人+赤ん坊が 旅を通して 疑似家族となる。

後半になって 彼らの内面が伝わってくると
わたしの見方は逆転した。
まんまと 是枝監督の術中にはまってしまったようだ。

ソヨンが子供を捨てようとした真意。
そしてユンが子供を売ろうとしていたのは
自分のようにはなって欲しくなく
捨てられた子供が 愛を与えてくれる幸せな家族に引き取ってもらいたかったのかもしれない。

サンヒョンだけがやるせない立場にいた。
実の家族に見放され
彼は奈落の底に突き落とされたのでは?
自分がしようとしていた「ベイビーブローカー」を後悔し
こんな自分でも ウソンを守る僅かな善意は残っているとでも言うような行為をしてしまう。
またそれは 人生に失望し 投げてしまったようにも見えた。

そんな中で 希望が見えたのはウソンの存在。
彼は捨てられ 売られるはずだった赤ん坊であったけど
多くの人たちに愛された事。
ウソンと関わった者すべてが
いつの間にか 彼を中心に皆が動いていた。

ベイビーボックスにウソンを入れた刑事ウジンも
自分がした事に申し訳無く思ったのかもしれない。
同時に ソヨンに対する思い込みから 別のものへと変わったのでしょう。
わたしと同じように。

エンドロールのピアノも 作品の余韻が残るいい旋律だった。
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