荒野の狼

劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き あるがままに、水と大地のネコ家族の荒野の狼のレビュー・感想・評価

3.0
NHKで放送されている「岩合光昭の世界ネコ歩き」の劇場版の第二作で2021年公開。タイトルは、『劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き あるがままに、水と大地のネコ家族』の「大地」は北海道の、「水」はミャンマーの人に飼われているネコを、それぞれ一年ほど追った作品で、テレビ版と特に変わりなく優れている印象もなく、劇場版としての工夫は特にない。テレビ版の一作品としてネコ好きには楽しめる内容。本作で素晴らしいのは、動画映像に時々、挿入される岩合の写真で、エンディングでは豊富な写真が楽しめる。写真家である岩合の真骨頂は、一瞬を切り取る写真にあることが実感される素晴らしさで、数分の映像でも感じられなかったものが、一枚の写真でより確かなメッセージが伝わってくる。作中では、隣接する建物を縄張りとするボスのメス猫同士の対決の連続写真が迫力があり、ネコの表情や動きが写真ならではの鮮明さで描き出されている。
本作品で疑問が残るのは、ミャンマーのヒトの家族と飼われているネコたちを「生きているだけが目的で幸せ」とひとくくりにしてしまっている点。ヒトの家族への差別と偏見ともとられかねない表現ではある。本作では、ミャンマーの子供たちが舟を使って通学し、勉強している姿勢も写されており、この子供たちには未来の夢と希望があり、ネコのように食べて寝るだけの一生を全員が理想としているわけではないはずである。家族を養っているミャンマーの父親も捕った魚を家族で食べるだけの生活のような描かれ方であるが、本作でも祭壇のある家に住み文化のある生活を過ごしていることが伺われるので、ナレーションにはリスペクトが欲しかったところ。
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