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シカゴ7裁判のryodanのレビュー・感想・評価

シカゴ7裁判(2020年製作の映画)
4.8
もともと法廷劇が好きで、日本の裁判制度より米国の裁判制度の方がむしろ詳しいくらい(笑)。その長年のキャリア(?)はこの作品を見るためだったのかと思うほど!さて肝心の裁判は従来の法廷劇とは全く違い、のらりくらりのトンデモ茶番劇。どうでもいいところで審理は何度も中断する。でもそこが今作の狙いでもある訳で。そもそも起訴に相当する案件ではないケースを、わざわざ起訴にして有罪にさせるんだから、そりゃオカシナ裁判になる訳だよ。しかも民主党への腹いせって!政治が、というか権力者の個人的な思惑が介入することで行政や司法が捻じ曲げられるという事件は、日本でも起きまくっている。「森友学園問題」なんて典型的な事件。どうも明らかに見えているんだけど「見えない力」は相当なもので、「見えない力」に屈した理財局長は天下り先を用意されて安泰な生活を送っている様ですよ。公務員手帳を常に持ち歩いて、常に公務員とはを自問自答していた一介の公務員は、捏造の指示と国家公務員の矜持との狭間で自らの命を絶った。作中の裁判長も同じで、従えば出世と安泰、拒めば左遷という訳でしょ。結局、十中八九は従わざる得ない、従って当然なのだ。そして前例が出来、権力の周りにいる人達は忖度し保身に走り、腐敗が蔓延していく。捻じ曲げられた行政や司法を司る役人達のモラルは奈落の底へと落ちていく。もちろん法廷劇だから裁判の行方が気になるところではあるけれども、この出来レースもしくは茶番がいかにして作られたか、に目を向けなければいけないのでは?特に同調圧力の強い日本では、こういう「右に倣え」体質が蔓延しやすい。一部の人間に権力を持たせないが正解で、そいつらを監視するために有権者に投票権が与えられているという至極簡単な正解が目の前に落ちているというのに。いろんな日常の些末な出来事が積み重なって忘れてしまう。終盤の戦死者を読み上げるシーン、このために立ち上がった彼等。今の日本に置き換えればまさしくそれは「投票」という事だと思う。「世界中が見ている」んじゃない、私達が「あんたら」を見ているのだ。
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