あまのうずめ

いつかの君にもわかることのあまのうずめのレビュー・感想・評価

いつかの君にもわかること(2020年製作の映画)
4.0
窓拭き清掃員のジョンは余命幾許もなく4歳の息子マイケルの里親探しを特例で許されケースワーカーのショーナと候補人を訪ねる。その中には広大な土地を持つ者、郵便配達人等々がいる。ジョンはケースワーカーにマイケルに残す“思い出ボックス”を提案されるが寂しい思いをさせると納得出来ないでいた。


▶︎『おみおくりの作法』のウベルト・パゾリーニ監督作で、事実から着想を得て自ら脚本も担当している。ジョン役のジェームズ・ノートンとマイケル役のダニエル・ラモントの演技のリアリティさと自然に思える目線や表現から互いの愛情深さが伝わって来た。ジェームズ・ノートンの出演する作品、ほぼ秀作で驚く。

まだ幼い子を残してこの世を去らなくてはならない心残りや切なさと共に、何と豊かなものを残して生きたのだろうかと思った。華美に彩ったり悲壮感を漂わせたりせずに、ただ父子の日々を描きたっぷりと余韻に浸らせてくれた。その余韻はラストシーンからエンドロールに入るタイミングでさえ計算されている。

どのシーンも印象的で、パゾリーニ監督に今作でもまた死生観を美しく観せられた。アコースティック・ギターの音楽も良く、反芻して聴きたい観たい作品の一つとなった。