空海花

ミッドナイト・スカイの空海花のレビュー・感想・評価

ミッドナイト・スカイ(2020年製作の映画)
3.9
ジョージ・クルーニー監督・製作・主演×Netflix
原作はリリー・ブルックス=ダルトンの小説「世界の終わりの天文台」

2049年、濃い髭をたくわえたジョージ・クルーニーは、滅びゆく地球の北極にたった独りで残っている。
切迫感のある哀愁が物凄い。
がんに侵され、彼自身の肉体も同じ運命を辿ろうとしている。
その演技は映画の重々しい雰囲気を一層引き立てている。
一方で宇宙パート、
フェリシティ・ジョーンズらは別の惑星の探査に行き、地球へ帰還途中だ。
探査内容は地球の人々が居住可能であるかどうか。

これはおそらくジョージ・クルーニーの集大成なのだろう。
出演作「ソラリス」「ゼロ・グラビティ」を思い浮かべる。
宇宙船内の無重力表現が巧い。
船外はまるでゼログラだけれど
その場面の結果は、目を奪われるほどの美麗シーンに昇華される。 
惑星K-23の世界も途方もなく美しい。
地球という水で満たされた青く美しい地球に住んでいたとしても。
一方で地球は…

荒涼とした雪景色。
寒々しい北極圏しか描かれないが、これが地球の末路の象徴だろう。
真っ白な吹雪の中のクルーニー
孤独過ぎて、厳しすぎて、圧倒される。
クルーニー身体張りすぎだよ~!
かわいい小さな双子がいるのに…
でもきっとこの映画はそんなクルーニーだからこその「メッセージ」なのだと思う。

最近、私は子守歌代わりにSF短編漫画を寝る前に読み返している。
寝る前に眼を酷使しない方がいいとはいえ、ストンと眠れるので気持ちよくて止められない。
それらはだいたい地球はもう汚染がひどかったりで住めない設定が多い。
一昔前のなのでそこまで現実感がないが
改めて考えると怖い話だ。
今作では大惨事があったとあるが
何が起こったのかは詳しくはわからない。
思いつくのは、戦争、原子力関連の事故、それ以外の兵器、環境汚染…
他にもあまり詳細が示されず、モヤモヤするところは結構多い。
ラストシーンの結実にとって
それらは問題ではない、というか
限定すべきではないのだろう。
すべて起こり得ることだから
どれが最も可能性があるかなんて
起こってしまってからはもう関係がない。
たとえ何があったとしても。
メッセージは変わらない。

つい邪推してしまうと
その2年前に探査船は飛び立っているから、2年前はかろうじて地球は無事だったということ。
だが居住可能な惑星を探していたということはある程度は予期されていたのだろう。
クルーニーは基地で、汚染マップのようなものを眺めている。
私は何となく、資源を食い尽くされて、自浄能力のコップから水が溢れたようなイメージが湧いた。

なかなか示唆的な表現が多く
一瞬一瞬を大切に観るべき映画。
重い余韻が続き、観た後も吹雪や宇宙の手探り感の中にいるようだった。
ジョージ・クルーニーの表情を見れば
軽々しくないテーマがあることは
始まってすぐにわかるだろう。

古き佳きSFの空気と斬新さもある映像美
ただならぬ演技と深いテーマのストーリー、完成度も高いと思う。
ただ何だろう、
救いはあるのに漂う悲壮感がじわじわ襲ってきて、何とも評価が難しい。
ラストシーンだろうか。
幻想的でクールで
これからの未来をどう思えばいいのかわからない。
フェリシティ・ジョーンズのあの夢は何だったのだろうか。
アイリスの花はとても好きなので
これは幸い💐


2021#003
2021No.2/自宅鑑賞2

脚本は「レヴェナント」のマーク・L・スミス
終わりと始まりの不思議な描き方。
空海花

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