ぴのした

オールドのぴのしたのレビュー・感想・評価

オールド(2021年製作の映画)
3.8
設定や展開が凝っていて面白かった!怖くはない。

1時間で2年、24時間で50歳ほど歳をとるビーチに閉じ込められた見ず知らずの人たち。無事に脱出できるのか…というあらすじは聞いていたけど、なぜビーチから出られないのかとか、なぜ髪や爪がめちゃくちゃ伸びたりしないのか(死体は白骨化するけど笑)みたいな設定までちゃんと理由が付けられていたのが良かった。

ネタバレになるけど、時間が早い(=傷口がすぐ塞がる)ことを利用して開腹手術するアイデアや、サビのついたナイフで切ることで相手の超回復を防いで倒すというバトル漫画じみた展開も興奮した。(それで言ったら手術の時に傷口に手を突っ込んでるのはバイ菌入って腐らない?て感じだけど笑 バイ菌も存在できないのか?)

黒幕の思考もぶっ飛んでいるようである程度理解できるのも良い。確かに「8年分の治験を1日で…」と言われるとメリットでかいなと思わされる。ただの自然現象じゃなくて相手が人間というのも後味良かった。

ウェルカムドリンクや、製薬会社の系列リゾート、子供の暗号の手紙など、伏線の数々もさすが。全く意識してなかった。

いわゆるホラー映画的な恐ろしさはほとんどないが、それぞれの病気が進行していく様子や、親がゆっくりとでも確実に老けていく様はまた違った意味での怖さを感じさせる。

初めて人はいつか必ず死ぬのだと悟った子供がパニックになるように、普段我々大人が忘れて暮らしている「死の逃れられなさ」を突きつけられたようで恐ろしかった。

その点、映画では最終的に脱出が叶うが、両親が死ぬシーンでは脱出を諦めて穏やかに死を受け入れる描写があったのも良かった。

歳をとるのは怖いことばかりではない。老人になれば若き日の誤りを許す寛容さを得られたり、子供から思春期になる時期には幼い頃にはなかった落ち着きを得られたり。スリラーというジャンルを崩さず、死への不可逆の旅を肯定的に捉えることで、映画に深みが増している。

海外ドラマのLOSTを思い出したと書いている人も多かった。ビーチのロケーションもそうだし、次々に襲い掛かる不可思議な現象や、脱出を諦めてしみじみ人生を振り返るというのも確かに似ている。

ちなみに、ジャック・ニコルソンとマーロン・ブランドが出る映画はミズーリ・ブレイク(1976)という西部劇だそうです。へ〜。