Kuuta

脱出のKuutaのレビュー・感想・評価

脱出(1944年製作の映画)
4.1
ヘミングウェイの原作をフォークナーが脚本化し、ホークスがハンフリー・ボガート主演で映画にした、凄まじい企画。

物を投げて、投げ返す。セリフでもなく、金のやり取りでもなく、この映画的なコミュニケーションの往復が、ハリー(ハンフリー・ボガート)とマリー(ローレン・バコール)を接近させていく。

最初は港や船での奮闘など、見慣れない絵面も多いが、次第にホテルでの室内劇が増えていく。ただ、画面は単調にならない。部屋での影の付け方、ランプの灯り、食事するホールでの人の動き、ピアノを囲む人の配置などなど…。

例えば、有名な2人の初対面シーン。何でもない部屋での会話が、目線、タバコの煙、マッチの移動、斜めの影によって、とても濃厚なものになっている。
https://m.youtube.com/watch?v=huTKkFSn8us&feature=youtu.be
(最後の「thanks」から煙吐くとこ良すぎ)

ナチスの占領地域でのアメリカ人の奮闘という、カサブランカ的な設定の中で、彼らは「金が入るから手伝う」という建前を守りながら、ナチスに反抗していく。

中盤、2人が隣り合う部屋の行き来を繰り返し、関係が深まっていく。ここでも、「相手がワインボトルを忘れていった」という建前を保ちつつ、盛り上がる2人の関係がボトルの「往復」という行為として描かれている。82点。
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