"I'm a Romanian in London."
東京国際映画祭2020にて鑑賞。
ロンドンに移民して一家4人を養うルーマニア人バイク運転手の主人公がバイクを盗まれたことから始まる災いと貧困をリアルに描いた79分のヒューマンドラマ。もっと言うとフィルムノワール。
不得意な英語で何とかやり取りしながら社宅付きバイク便で黙々と働く男の背中が健気。その走行中の背景に映るロンドンの街並みと不思議にマッチするBGMが何だか生ぬるく心地良い序盤。
だがしかし、タイトル通り彼のバイクが何者かによって泥棒されるところから一転。悲劇は始まる。
本作は単に犯人探しの推理サスペンスではなくて、大切なものを失った時の被害者の心理描写に重きを置いている。
それと同時にロンドンの移民事情、ミスしたら一発アウトの過酷さをありありと見せているのが怖い。これが労働階級への扱いという事なのか。
自分は未見だがどうやらイタリア映画の『自転車泥棒』のオマージュが垣間見える構成が多々あるとの事。
ラストは因果応報というか、ある種アメリカンニューシネマ的な黒い余韻がある。同時にもうちょい観たくもなる。
ケンローチとか好きな人にはおススメの陰鬱さです笑
どんよりしちゃうけど、学びの多い映画でした。
