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皮膚を売った男のmityのレビュー・感想・評価

皮膚を売った男(2020年製作の映画)
4.0
観ようと思っていた作品で、観て良かったと思えるのは嬉しい。後味悪く終わるかと思ったら、おっ!という展開が待っていたのも面白かった。

自分の背中を差し出して自身が「アート作品」となったサム。その対価はお金と自由。難民であるサムにとって、世界を自由に往き来出来る権利を手に入れたことは大きいと思うけれど、美術館に展示されたサムの姿から感じたのは、“自由”ではなく“不自由”だった。

ジェフリーのアート作品となったことで生じたのは、作品としての価値であり新たなルールで、シリアでの不自由さとは別の不自由が、サムを縛りだしたように思えた。ジェフリーの提案にのった時は思いもよらなかった出来事の数々に次第に追い詰められていくサムの姿から感じた、真に自由とは?との問い。

そして、ジェフリーの「怖いのはシステムよりも無視されること」の一言もまた、この映画のメッセージなのだと思った。政治的意図とは関係なく「自由」「革命」と叫ぶだけで逮捕される国シリア。シリアで暮らすということ、シリア難民が直面する過酷な現状・・・。アートと難民という取り合わせで突き付けられる問題が、ガツンと響いてきた映画だった。


#139_2021
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