ひば

愛してるって言っておくねのひばのレビュー・感想・評価

愛してるって言っておくね(2020年製作の映画)
4.2
昔聞いた子供へのグリーフケアの言葉を最近何度も思い出す。悲しみはあなたを波のように何度も襲うだろう、そんなときは抵抗せずに波に身を委ねダンスをしよう、そして波が引いた時砂浜には大切な人との美しい思い出が残るだろうと。
また直近でわたしを立ち直らせた言葉がある。これは徐京植氏の言葉だ。「希望性に満ちて人間性というひとつの概念を、与えられたひとつの信仰のようにすがることはもうできない。しかし私たちはその廃墟の中から破片を拾い集めるようにそれを再建しなければならない。過去において暗黒や懐疑にふけろうとする私に、時々そうしたキラッと光る破片の形をとって、絶望することや放棄することを断念させる」
わたしにとって"光る破片"はこれまで映画だったが、そのフェーズを脱しようとしている。現実との仲介を果たす背景の思惑にもううんざりだと感じたこともだが、ただ単に、自分には必要ないと思えるようになっただけともいえる。綺麗な形をした画面内のキャラクターより、型となり身を隠している歪な人間に目を向けたいという気持ちが深まったというのもある。

『"銃社会"アメリカの分断』というドキュメンタリーがありたいへん参考になった。新型コロナで社会不安が高まった2020年、アメリカでは2200万丁の銃が売れ銃による死者が30%増加した。アメリカの銃犯罪は麻薬の温床とされる隣国メキシコよりずば抜けて多く、メキシコの銃犯罪はアメリカから違法で流れた銃によるものが圧倒的だ。人が銃を一度手にすれば決して戻すことはない。銃犯罪の日常化によりもはやニュースにもされず、銃で死ぬことなどないと諭した末に恐怖に怯える身内(子供)を立て続けに失い佇む人なども出てきてとても悲しかった。また、死亡者の声だけが届き銃撃を生き残った生存者の声がまったく届かない捻れた現実もある。麻痺や人工肛門など生涯の傷を負う人たちがいる。誰に、なんのために銃撃されたのか一生わからない人もいる。問題は銃でなく人だという声に対して「いいや違うね」と断言した。持つと急に勇敢になり事態が緊迫すると発砲したくなるものだ
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