ツクヨミ

浜の朝日の嘘つきどもとのツクヨミのレビュー・感想・評価

浜の朝日の嘘つきどもと(2021年製作の映画)
3.9
映画好きな先生と過ごした掛け替えのない日々。
福島県南相馬にある映画館"朝日座"は大震災とコロナ禍を経て閉館しようとしていた。そんな折に映画館を復活させようとする茂木莉子が現れて…
映画という文化の現状に迫った人間ドラマ作品。今作は各地のミニシアターが抱える厳しい現状を背景に映画が人に与える影響を描いていて心がジーンと温まる映画でした。映画じゃお腹は満たされないが心は満たされる、映画は暗い空間の中で知らない人がそれぞれ違った感情を抱かせてくれる、映画好きはフィルム割りの暗さもあって根暗な人が多いなどのセリフが当たり前だけど改めて映画の良さを思い出させてくれた。
また今作は田舎のミニシアターが抱える現状を痛烈に映す。コロナ禍で集客が伸びないのはもちろん、映画館を続ける上でかかる必要経費も嵩む。そして追い討ちをかけるように他サービスを掲示して映画が社会にどんな好影響を与えるか言及してくる重圧が映画館再開に立ち塞がる。一筋縄ではいかない問題…考えさせられます。
そして今作の肝は"家族関係は幻想"という思想は主人公の過去の行動指標としてよかった。家族関係にうんざりした彼女は先生にコミニティーを求めていく。"東京物語"とまでは言わないが家族の痛烈な現実に共感してしまった自分がいる…彼女には家族より他人の温かさが必要だったのだろう。
ラストシーンは"映画が人生を変える"ということを予感させる素晴らしいラストでした。どんな人にも自分を変えてくる作品はどこかに存在していると思うし、そんな機会を与えてくれる映画館はずっと無くならないで欲しい。映画好きの真摯な願い。
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