森山未來による「21歳のボクが、オッサンになるまで」。
1995年から2020年までが「メメント」みたいに逆の時系列で描かれてる作品なのだが、それぞれの年代がかなり忠実に描かれてて感心。
渋谷シネマライズ! ソニック・ユースのTシャツ! WOMBっぽいクラブのVIPルーム! タワーレコードの壁面広告の「DOOPEES」のジャケット(ってか、この作品、そんなに推されてなかったと思うが……)! そして、90年代のラフォーレ原宿のシーン。これ、どうやって撮ったんだろう?
そして、森山未來!
21歳にも46歳にも、見栄晴にも見えるカメレオンっぷり。特に21歳のときの肌ツヤの良さは何なんだ!? CG? ヒアルロン酸? 全身整形? 改めてNetflixスゲー! 金ある! って思いました。
物語としては、色々な女の子と付き合いながらもモラトリアムを続けている森山未來が、過去を回想していって、やっぱり一番最初に付き合った不思議ちゃん・伊藤沙莉が良かったなぁ……ってなる話。
「音楽ガチオタ勢は電グルを電気、オザケンを小沢くんって呼んでたやろ!」
みたいなキモい言いがかりを始めると、「大人になれなかったむらむら乙」と言われそうなのでヤメにして、今回はノスタルジックに、印象に残ったシーンと、俺自身の自分語りのコメントを列挙することにしました。
自分語りだらけなので長いです。
■酔っ払ってゴミ袋の山に倒れ込むコロナ禍の森山未來
こないだ似たようなことやって顔面打撲したので身につまされた。路上飲酒には気をつけたい。
■大島優子から求婚されてスルーする森山未來
大島優子に「結婚して」って言われて、それはちょっと……ってなる森山未來。
それ以前にも(映画としては先の話だが)SUMIREとか伊藤沙莉と付き合ってるのに贅沢すぎ。キモオタニートの俺が言うのもアレだが、ちょっとは俺に分けてほしいと思ったシーン。
■中国ハーフという設定のSUMIREと出会う森山未來
(ちょっとネタバレだが)自分の部屋に来た森山未來を「客が来るから」と追い出すSUMIRE。SUMIREは、自分の部屋は社長の持ち物で、この部屋で客とハメるのが(←とは言ってませんが)自分の仕事だという。
これはマンションヘルス、通称マンヘルと呼ばれる風俗の一業態。
業者がマンションのワンフロアを借りて、そこに女の子を住まわせ(もしくは通わせ)、男たちがその部屋にやってくるというスタイル。90年代後半に流行し、「デリヘル」が合法化した現在では絶滅してしまった。だが、香港では現在も、風俗の主流だ。詳しく知りたい人は「香港 ピンポンマンション」で検索するといい……と、新宿シネマートのエレベーターで会った、見知らぬ爺さんがブツブツ言ってました。
関係ないけど現在上映中のインド映画「囚人ディリ」のレビューがfilmarksのタイムラインに流れてくると、いつも「囚人デリ」に空目してしまうのでなんとかしてほしい。
■天井に銀河鉄道の描かれたラブホテルに行く森山未來
さらに過去に戻り、いよいよ伊藤沙莉の登場(というか別れ間際)。
森山未來が伊藤沙莉と通っている渋谷のラブホテルには、天井に「銀河鉄道の夜」をイメージした天井画の描かれた部屋がある。
俺、宮沢賢治好きで、何度か岩手まで足を運んだことがある。花巻市には夜だけ観ることのできる、銀河鉄道の巨大な壁画があって、観たときになんか感動したのを思い出した。
銀河鉄道にもし乗ることが出来たら、星座から遠く離れていって、景色が変わらなくなるようなところまで行ってみたいなぁ。
話を戻すと、ラブホから出て、伊藤沙莉と最後の別れになるシーン。伊藤沙莉が「用事があるから」って円山町の奥に向かうんだけど、そんなとこに用あるか? そっち方面って、ラブホ以外は、BYGくらいしかないんやけど……。まさか重度のはっぴいえんどファン、ってことか!? と思ったら違った。というか映画では言及が無くてモヤモヤした。
ちなみに豆知識だが、ラブホテルに入るときは、財布と携帯はシャワー浴びる間も風呂場に持ち込んだほうがいい、と、新宿シネマートの1Fで見知らぬ爺さんが言ってたので、意味はよく分からないが、一応、ここに書いておく。
■伊藤沙莉とドライブして旅行いく森山未來
車中泊をして、朝日を見るデートをする二人。車には、おそらく、あるだけの毛布やマフラーを積み込んでるんだろうなぁ。くっっっっっっっそウラヤマシイ。
俺はレンタカーで車中泊をする旅が好きなのだが、車中泊ヲタはこんなビートルみたいな小型車は使わない。レンタカー屋でゴネて、フルフラットの「ルーミー」や「ハスラー」を所望するのだ。伊藤沙莉よ……俺とデートしてくれたら、フルフラットの車で快適な車中泊を楽しむことが出来たのに……今からでも遅くないから、連絡を待っている俺である。
■パン工場と映像制作会社でバイトする森山未來
俺もパン工場と映像制作会社でバイトしてたので、めっちゃパン工場から脱出して映像制作会社に就職して喜ぶ森山未來の姿に共感した。
パン工場、「オハギにゴマを振る」的仕事が延々続いて、チャップリンの「モダンタイムス」みたいな単調作業の連続。作業自体は軽作業なんだけど、とにかく退屈。休憩時間にヤンキーっぽい兄ちゃんが「俺、もう3年くらいやってんだけどさー」ってゆってて驚愕したの覚えてる。結局、俺3日で脱落。
映像制作会社は、この作品のようにテロップを入れる仕事でもなかったし、怒鳴り散らすTVプロデューサーもいなかったけど、変わった人がいっぱいいて面白かった。
■文通相手を探したら伊藤沙莉だった森山未來
デイリーアンの文通欄で手紙を書いたら、返事が来て、何度かやりとりして、冒頭に書いたような原宿ラフォーレ前で会ってみたら伊藤沙莉だった、というのが、伊藤沙莉との出会い。
伊藤沙莉と並んで、原宿(渋谷)あたり風をきって歩いてく、森山未來のドヤ顔に呪術廻戦を仕掛けたくなった。
こんなん、宝くじの一等が連続当選するくらいの確率やろ。どんな不正をしたら伊藤沙莉から直筆レターがくるのか教えれやがれください。
なんで森山未來には、伊藤沙莉から手紙がくるのか。
なんで俺には、共産党のチラシか水道屋のマグネットしか郵便受けに入ってないのか。
もう郵便受けの中のものをゴミ箱に捨てるか冷蔵庫の扉にペタペタ貼るかの人生からは脱出したいと強く思った俺である。
■現代に戻った森山未來
そして時は2020。
「普通」の生き方で、愛し愛され……じゃなかった、流されて生きてきたと回想する森山未來。
でも、なんだかんだ言って色々コジらせてても、森山未來、めっちゃリア充やん! モテキありまくりやん! ラッキースケベの連続やん!
というわけで、人生に黒歴史しかない「ダークナイト」みたいな俺からすると、「他人の普通は、超、異常」と先達の言葉にもあるように、森山未來くらいラッキースケベのある人生は、全然普通じゃないよ!
でも、やっぱり、どこかグッとくる映画だったなー。
いつまでも続くと思っていた瞬間も過去になり、やがて僕らが過ごした時間は遠くへ飛び去っていく。
いつか全ては優しさの中へ消えてゆくんだとしても、二度と戻らない美しい日の記憶は、いつまでも残り続ける。
……全力疾走する森山未來の姿を見て、どこかで聴いた鮮やかなフレーズを色々と思い出してしまう、俺なのであった。
(おしまい)