Punisher田中

ホムンクルスのPunisher田中のレビュー・感想・評価

ホムンクルス(2021年製作の映画)
3.3
一流ホテルとホームレスが溢れる公園の狭間で車上生活を送る名越は、過去の記憶も感情も失い、社会から孤立していた中、奇抜なファッションに身を包んだ研修医・伊藤が目の前に現れる。
「頭蓋骨に穴を空けさせて欲しい」
突然の要求に戸惑う名越だったが、 “生きる理由”を得る為、第六感が芽生えると言われるその手術<トレパネーション>を受けることに。
術後、左目だけで見ると、人間が異様な姿に変貌した世界だった。その現象を「他人の深層心理が、視覚化されて見えている」と説く伊藤。彼はその異形をホムンクルスと名付けた―。
名越はホムンクルスを介して、様々な人間の心の闇と向き合っていく。

清水監督だから少し怖気づいていたが、他人のホムンクルスと向き合いながら、自分の失った過去についても明らかになっていくという少し面白い構成でそれなりに退屈せず、楽しめた印象。
ただ、詰め込まれすぎているのもあってか説明が成されてない箇所が多々あり、この手の話ならドラマにして展開したほうが分かりやすくて良かったかもと感じられる。
それ故に、トラウマを描くならもっとゆったりと描いて欲しかったし、ここまで加速度のあるトラウマの描き方は薄く、あまり響かなかった。
しかし、ここまで過激な描写が詰め込まれているのはいいよね。ネットフリックス限定作品は振り切っていて素晴らしいけど、頭蓋骨に穴を開ける描写がモロだったり、随所随所にエグい描写が差し込まれている為、苦手な人は見ない方が得策かも。

また、ホムンクルスのCGを用いた描写もよく出来ていたなと個人的には思いつつ、ちょっと過剰かなという部分も感じられた。そこが分かりやすくしてくれてるのかもなんだけどね。
あらすじからしてわかる通り、メッセージ性が強い作品であり、「世界が歪んでいるのか、はたまた自分が歪んでいるのか」を考えさせられる作品となっていた。
作品上で全編通して名越やキャラクター諸々にある「歪み」をしっかり表現し、名越に施したトレパネーションが伊藤にどのような影響を与えたのかを見ることで、今作の根幹にかる恐怖を感じることができる異色の作品だと感じられる。
今作ばかりは、頭を使いながら見ないとあまり面白くない為(どんな作品も基本そうなのだが)気になる方はコンディションバッチリの状態で鑑賞に臨む事をオススメします。
原作読みたいんだけど、殺し屋1がトラウマだからちょっと無理かも...