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BLUE/ブルーのmoobyooのレビュー・感想・評価

BLUE/ブルー(2021年製作の映画)
4.8
近年の吉田恵輔監督作品は毒気での勝負でしたが、本作はあるボクシングジムに在籍する3人のボクサーが歩む三者三様の生き方から奏でる意表を突くまさかの人間賛歌です。

プロだけど万年ブルー“青コーナー”で全く勝てないボクサーオタク瓜田役の松山ケンイチさん。瓜田の後輩ながら日本チャンピオン候補の怖いもの無しなパンチドランカー小川を演じる東出昌大さん。ただモテたいだけが理由で“ボクシング風”を習いに来ている楢崎役の柄本時生さん。それぞれが発する個性豊かなキャラは集合体として豊かな人間味を醸し出しています。

試合のシーンは多いけれど、所謂クライマックスにファイトシーンで盛り上がるサクセス的定番要素を排除しているのを筆頭に、闘い以外でもボクシングを描く狙いが見事にハマり、多種多様な構成で深い物語りになっています。

静かで厚く好演する松山ケンイチさん。一途馬鹿だけど迷わない東出昌大さん。片手間から生業への変化を飄々と表現する柄本時生さん。そして木村文乃さん演じるヒロイン千佳のフワリとした佇まいを箸休めにしながら、いくらでも劇的に成り得る数々の様相を敢えて牽制して深追いせず結論を示さない物語りがジンワリした余韻を残します。

最速試写会での鑑賞で、上映後に吉田恵輔監督のトークイベントがあり、いろいろ興味深い話しが聞けました。監督と脚本だけでなく殺陣指導ともクレジットされていて?と思っていたら、監督自身が実際に30年以上ボクシングジムに通っている所以から生まれた作品で、自ら俳優陣の擬闘を行ったと云うことだそうです。
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