緋里阿純

ハウス・オブ・グッチの緋里阿純のネタバレレビュー・内容・結末

ハウス・オブ・グッチ(2021年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

冒頭で“事実から着想を得た物語”と注釈があったように、あくまでフィクションとして観るべきなのだろう。

巨万の富を手にするため、華麗なる一族に潜り込んで来た悪女によって、次第に崩壊していく帝国の様子を描いた作品。

ただ、どこまでフィクションが入っているかは分からないが、レディー・ガガ演じるパトリツィアが暗躍せずとも、既にグッチはブランドとして緩やかに沈んでいくことは目に見えていたので、「まぁ、どちらにせよ時間の問題だったでしょ」というのが1番の印象。
また、ブランドとして再起するために不要な経営陣を切るように指示・根回ししたり、巷に蔓延るレプリカ品に対処しようとしたりと、パトリツィアの方針は決して間違ってはいなかったようにも思える。あくまで、夫の殺人を依頼したことが不味かったのであって、経営者としての手腕はマウリツィオより明確に上として描かれている。勿論、署名の偽造も問題だが、序盤で父親の署名を真似てサインしていた伏線回収によるコント的な描かれ方だったので、そこに関しては割とマイルドな印象。
そういう意味では、彼女をよくある悪女モノの“度し難い悪女”としては見ることは出来なかった。

豪華俳優陣の演技は最高。
マウリツィオ・グッチ役のアダム・ドライバーによる序盤の童貞臭い演技から、権力を手にして次第にパトリツィアに似ていく様。
エンドロールを見るまで気づかなかったパオロ・グッチ役のジャレット・レトの風貌と、自らは凡人だと気付けないバカ息子具合。
最早何を演じようと絶賛されるであろうアルド・グッチ役の名優アル・パチーノ。
これだけの俳優陣を集められるのは、流石巨匠リドリー・スコット監督といったところ。

「クソとチョコレートを間違うな。見た目は同じでも、味はどうだ?」
「男は自分が実際よりも賢いと思うから困る。」という台詞もお気に入り。

ただ、長い(笑)このシンプルな話で2時間半は流石に飽きる。
110〜115分の尺で纏められていれば、もっと賞賛出来たのにという感じ。

というか、リドリー・スコット監督、貴方『エイリアン/コヴェナント』を撮るために、自らは製作総指揮に回った『ブレードランナー2049』の興行的失敗で、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の作風に対して「ちょっと長すぎた。私なら20分は短くする。」って言ってましたよね?
ブレランよりコッチを短くしてくれ(笑)ましてや、コッチは貴方が監督だろ(笑)

あと、事務所で貪るようなSEXをして、レディー・ガガが獣のごとき喘ぎ声を上げてからの結婚式の流れは完全にコントだと思った。『ごっつええ感じ』とかでやっていても違和感無いようなハジケぶり。

そもそも、この話自体が寓話を織り交ぜた壮大なコントだったのかもしれない。
ただ、最後の“現在、グッチの経営陣に一族の人間は一人も居ない“という一文は笑えない事実なのだが。
緋里阿純

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