よしまる

ハウス・オブ・グッチのよしまるのレビュー・感想・評価

ハウス・オブ・グッチ(2021年製作の映画)
4.3
 滑り込みセーフで劇場にて。いやぁ、映画館で観れて良かった〜。このくらいの長尺になると劇場の没入感がないと配信では途中で気が散ってしまうのだけれど、157分もあったのに片時も目が離せない濃厚な時間を過ごせた。
 あ、ウソだ、占い師のシーンはトイレ休憩可(って、行ってないけど。それでか知らんがガガと占い師のベッドシーンが撮られてお蔵入りしてるらしい。観たくはないw)。

 GUCCIの歴史からおさらいしてくれるのかという期待は見事にかわされた。創業者グッチオグッチが馬具から財布やベルトへと抜群の嗅覚で商材を広げ、バンブーハンドルやビッグスキンを生み出していく過程なんかが観れたらアガルだろうな〜と思っていたけれど、そうした40年代から50年代へと栄華を極めるところはドーンと端折り、舞台はいきなり70年代末。3代目グッチのマウリツィオと、その妻パトリツィアの出逢いからスタート。

 レディガガ演ずるパトリツィアがトラック運送業者の娘だというのに10センチ以上あるピンヒールを履いてモンローウォークしているオープニングを観て、あ、もうこれは鼻っからガガを中心としたお家騒動しか描きませぬ!という潔さだなと笑

 観る方もそうやって頭を切り替えてしまうと、GUCCIそっちのけでアダムドライバーとガガの恋愛ドラマを楽しみ、アルパチーノとジャレッドレトのマフィアごっこを楽しむという方向で一挙手一投足が面白くて仕方がない。もちろん、GUCCIのアイコンであるファッションやバッグも眼福だし、ソフィアローレンネタも楽しいし、トムフォードにカールラガーフェルドにアナウィンターとそれっぽい人が次々としたり顔で出てくるのが嬉しくて仕方ない笑
 あー、つくづくミーハーだなぁと自分が愛おしくなるわww

 観る前から当のグッチ一族が映画を批判している記事をさんざん見かけていて、一方でGUCCI本社は映画への全面協力を惜しんでいないというのが、既にGUCCIはグッチ家のものではなく、「ハイブランドの代名詞である」というその一点のみにおいて正義をふりかざし、ブランド価値を高めることに心血を注いでいる経営者や投資家がいることが見え隠れする。

 結局、アルドもマウリツィオも、もちろんパトリツィアも、経営者としては無茶苦茶でダメダメ、人物としてもヘンテコリン。そりゃ描かれた家族たちは怒るでしかしってなもんだけれど、だからこそ一旦GUCCIは没落したのだし、エルメスやシャネルのような独立系で輝き続けるブランドとは違って、所詮は巨大コングロマリットの一部でしかない。

 なんて偉そうなこと言いながら、昨年は創立100周年記念でそれぞれ開催された、京都でグッチバンブー、天王洲でグッチガーデンアーキタイプというイベントに大はしゃぎで行ってきた。
 トムフォード曰く「全盛期にクールで流行の先端を行く存在だったブランドが、今もそうなれない理由はない」。
 まさしくその通りで、伝統があるからこそ現代に則した最先端をやる意義がある。

 リドリースコットもそんなことは百も承知で、このお家騒動を面白おかしく紹介し、自らもファッションを楽しんだのではないだろうか。監督自身が選曲したというドンピシャの80年代のヒット曲。ニューオーダー、ブロンディ、ユーリズミックス、、どこのMTVだよ笑 椿姫からのジョージマイケルとか、エンディングにパバロッティVSトレイシーチャップマンとか、ほんと80超えた爺さん、あんたサイコーだよ!