keith中村

バズ・ライトイヤーのkeith中村のレビュー・感想・評価

バズ・ライトイヤー(2022年製作の映画)
4.0
 こういうメタな設定の映画であることは予告で理解できたけど、最近で言うと「ハケンアニメ!」の劇中アニメを通しで見せてもらったって感じか。いや、ちょっと違うか。
 バービー人形のアニメ? 鶏と卵があべこべだけど、そういうことですよね。バービーも「トイ・ストーリー」シリーズ出てるし。
 
 「まあ、こんな感じくらいかと予想してたら、やっぱこんな感じだったよね」が感想。ピクサー作品なんで、観る前からハードル上げちゃうこっちも悪いんだけど。
 ソロプレイ型の天才がチームワークに目覚めていくというテーマは悪くないんだけど、そこはまあまあ直接子供の観客に訴求するように構成されてるんで、ピクサーのいつもの「大人が観てるほうが子供より刺さる」という裏テーマがないストレートな娯楽作品になってました。
 ソロプレイヤーがチームになるというのは、そもそも一作目の「トイ・ストーリー」ではあるんだけれどね。
 
 ストレートな娯楽作品を観に行っといて、「ストレートな娯楽作品に留まってました」ってディスり気味に書くのも失礼な話ですが、やっぱピクサーだから期待しちゃうじゃん。そういうことです。
 
 夥しい過去のSF映画への参照やオマージュは映画ファンとしては楽しくもあるんだけれど、逆に既視感だらけでもありました。
 特に終盤の展開はあまりにも「ロスト・イン・スペース」に似すぎてないかい?
 
 良かったのはバズたちの宇宙服(スーツ?)のカラーリング。見慣れたバズの恰好なんだけれど、オモチャと違って深みのあるグリーンで、しかも実写なんで(←違うだろ)細部がよりしっかり描かれてましたね。
 あと、惑星に最初に降り立った時のセリフが一作目のベッドの上のまんまで、ここはニンマリできるところ。
 二作目ザーグの「I'm your father」は、「え?! マジでそれなぞっちゃう? まんまEP5じゃん!」と一瞬思わせて、実は、というのに捻りが効いてた。まあ、しかし、だからこそ「ロスト・イン・スペース」になっちゃんだけどね。
 
 あとIVAN(NAVIのリバース綴りですね)を挿して、調子が悪いからって息を吹きかけて挿しなおす描写って、ファミコン世代じゃない今の子供にはわかんないギャグでしたね。
 
 ウラシマ効果のせいで、どんどん仲間と年齢が開いていくってのも数限りなく読んだり観たりしてきた設定だけど、やっぱ本作でも切ないですね。これ、枚挙に暇がないから逆に変化球ほど印象に残るんだけど、その意味でリアルタイムに観ながら思い出したのは是枝監督の「真実」とクイーンの「'39」でした。
 そこから紡がれてゆく物語としては、過去の分岐点に戻らず現状肯定して終わるというのも、かなり現代的でした。特に、勢いのなくなった現代日本の観客の一人としてはある種の諦念と共に、感じ入るところがありました。
 
 猫型ロボットのSOXも良かったですね。本作のMVPかも。
 猫型ロボットっつっても日本の青いあいつじゃなく、ほんとに猫型でしたね。まあ、本作に日本の青いあいつが出てれば、序盤で全部解決できちゃうから映画にならないんだけど。
 
 ところで今回「A113」出てきました? 見逃しちゃった。
 「銀河ヒッチハイク・ガイド」オマージュであろう「42」は出てきたけどね。
 
 エンドロールでルクサー君出てきたんで油断して席を立ったら、最後にまだありましたね。
 通路で立ち止まって観ちゃった。
 でもさあ、本作って続篇作る必要ある?!

 あと、予告で流れてたデヴィッド・ボウイが流れなかったのも残念だったな。まあ、流れないと予想してたんだけど。
 「子供に理解できない裏テーマ」の代わりに「親父接待満載のロックだだ流し」でも満足できたろうけど、「オデッセイ」とか「GOTG」とか、そっちも最近多いもんね!