ゆめちん

モーリタニアン 黒塗りの記録のゆめちんのレビュー・感想・評価

4.0
モーリタニアン 黒塗りの記録
 
"アメリカは正義の国と信じていたのに、恐怖で支配するとは思っていなかった"
 
2005年、アフリカのモーリタニア出身で9•11の首謀者の1人として拘束されたモハメドゥは、裁判すら受けられず、何年も地獄のような投獄生活を送っていた。弁護士のナンシーは "不当な拘禁" だとしてアメリカ合衆国を訴える。
 
9•11から20年が経過した今、当時の恐怖や悲しみが改めて思い出されたばかりだが、実はテロの後、アメリカが国家ぐるみで非人道的な行為を行っていたことに愕然とする。
 
物語は淡々と進んでいくが、拷問シーンはあまりにも強烈で目を逸らしたくなるほど。あんな仕打ちを受けても正気を保てたモハメドゥの精神力の強さに驚くばかり。そんなモハメドゥが裁判官に語りかけるシーンは心に深く響いてくる。
 
ジョディ・フォスターとベネディクト・カンバーバッチの演技合戦も本作の見どころ。
真っ赤な口紅が印象的で、強い信念を持ってモハメドゥを支える弁護士役はジョディ・フォスターにぴったり。モハメドゥを起訴する立場にありながら、良心に目覚める米軍中佐役をベネディクト・カンバーバッチが人間味溢れる演技で魅せてくれる。

アメリカは未だにグアンタナモ収容所で起きた、モハメドゥに対する拷問の責任を認めず、謝罪もしていない。さらにオバマ政権が2009年グアンタナモ収容所の閉鎖を表明したが、未だに閉鎖されていない。
他国の人権侵害を非難する前に、まずは自国の襟を正す必要があるのではないかと思う。 
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