ケンフィー

竜とそばかすの姫のケンフィーのネタバレレビュー・内容・結末

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

体内の感覚と連動した、50億人が参加する新感覚のバーチャル空間〈U〉。その中で人気者の、目の下にそばかすがある歌姫BELLE(ベル)と、それとは対照的に暴力的で誰も寄せ付けない竜が、バーチャル世界〈U〉を超えて、自分の臆病さを克服していく様子には勇気を与えられました。

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バーチャル世界〈U〉では、現実世界の人体と接続されており、潜在的な能力が引き出されるという。優しい歌声で人気者になったベルだが、現実世界では、幼い時に母親を亡くした傷が癒えないまま今に至り、自分に自信がなく歌うこともできない田舎の女子高生「すず」。そして対照的に暴力的で、正義を名乗る集団に〈U〉から追い出されようとしている竜だが、現実世界では父からの虐待に耐えながら過ごす少年だった。

ベルは竜を助けようと、すずはその少年を助けようと、竜やその少年の心に寄り添うが、自分のことを信じてもらえない。

「姿を晒して歌うんだ」

その一声で、ベルは匿名性のバーチャル世界〈U〉でアンベイル(正体晒し)して、優しい歌声を奏でる。この時、自分に自信がなくて歌えなかった「すず」が、臆病さを克服した瞬間であった。そして、その様子は、竜や少年にも勇気づけ、多くの人を感動させたのだった。

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〈U〉は、匿名アカウントによる誹謗中傷や正体探しが行われているインターネット空間と近いところがあり、インターネット空間にも、正義を振りかざし誰かを排除しようとする「ジャスティン」や、現実で心を閉ざし暴力的な竜は存在する。

僕は、竜や多くの人を勇気づけたベルのように、表面上だけ理解して終わるのではなく、その人の本心や弱さに向き合って、何かに屈することなく、自分ができる最善を尽くしていきたい。