夏日

竜とそばかすの姫の夏日のネタバレレビュー・内容・結末

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

「あなたは、誰?」


現実世界は手書き、Uの世界は3DCGで描かれてるアニメの演出が好き。3DCGが発達してきた今らしい、この作品にあった表現だと思うし、Uのデジタルな雰囲気と、現実世界の平凡な生活の豊かさが伝わってきた。あとはなんといっても中村佳穂さんの歌声と、常田大希さんの楽曲が素すばらしすぎる。

生体から潜在的な能力を引き出してアカウントを自動でつくるUのシステムで、大好きな歌を歌えずに悩んでいたすずや、虐待から弟を守るために盾となっていたけいが、歌声や戦闘力に秀でたアカウントになる設定は面白いと思った。単純な肉体だけじゃなくて精神的なものも読み取ってるんだろうな。

一方で、「なりたい自分になれる」は嘘じゃんとも思ってしまう。現実の自分とは全く違う自分として生きていける場所であってもいいと思う。現実でも素性がわからなくてもすばらしいアーティストっているし。あと、あなたのアカウントはこれですってウンコみたいなやつが表示されたら嫌じゃん。

すずにとって、歌は母そのものなんだろうなと思った。だからこそ歌えなくなったし、だからこそけいを助けるために素顔を晒して歌ったときに母を思い出して、母がなぜ幼い自分を残してまで、命がけで子どもを助けに行ったかを理解したんだと思った。母のような存在だったからしのぶは歌で気づいた。

『美女と野獣』のように、「現実の私とネットの私」の二面性がテーマで現代らしいなと思った。現実は往々にして平凡で、でもネット内は綺羅びやかに装飾して理想を演出する。理想で取り繕った自分ではなく、ありのままの自分を曝け出すことが美しく描かれてて、Uですずの姿で歌うシーンは感動した。

ただオレは、人はいくつものペルソナを使い分けて生活してると思ってるから、友達や家族、上司で接し方が変わる自分がいてもいいし、ネットにはまた違った自分がいてもいいと思ってる。「すべて自分だ」と胸を張ればいいと思うし、好きな自分を引き出してくれる相手や環境が見つかるといいと思う。
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