紫

スペンサー ダイアナの決意の紫のネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

事実を基にした“寓話”
本作品の冒頭書出しはこのように記されている。

1991年のクリスマス3日間に焦点を当てた、物語。

まず映像や衣装、音楽が美しく、どのシーンを切り取っても絵画のようで素敵だった。
そして、クリステン・スチュワートが違和感なく“本物のダイアナ”を演じきっている。
私が物心着いた時には既にダイアナは亡くなっており、映像や伝記を読んだ程度でしか彼女のことは知らない。
しかし、美しい顔立ちと折れてしまいそうなくらい細い身体、どこか自信がなさそうで伏し目がちな姿が、私が思う”ダイアナ“そっくりに感じた。

夫の不倫と伝統を重んじる英国王室息苦しい空間で過ごす彼女が、徐々に奇行に走ってしまう様子が、とても見苦しく、観ている側も一緒に辛くなってしまう。

ヘンリー8世に不貞の罪を着せられ、処刑されたアンブーリン王妃を、自身と重ね合わせ、幻覚等見えてしまうシーンは心痛む。

最後には、呪縛から解放されたように、唯一王室の中で信頼を寄せているマギーとの会話のシーンや、息子たちとKFCを食べテムズ川に黄昏れるシーンを観て、鑑賞側も漸くホッとする事ができた。

本作品は全てが事実ではないが、ダイアナが英国王室の被害者の1人である事は間違い無いし、日本やその他の国々もこのように息苦しく感じる部分があるのだろう、と同情せざるを得なくなった。
紫