えむ

カラーパープルのえむのレビュー・感想・評価

カラーパープル(2023年製作の映画)
3.8
ミュージカル好物なもので待ち構えて初日に観てきました!
海外賞レースの時のパフォーマンスが素晴らしかったのよね。

黒人が奴隷のように虐げられていた時代、その黒人社会の中でも女性は最下層として同じ黒人の男性に踏みつけられ、その横暴さをた黙って受け入れるしかなかった。

この主人公は、その中でも最も搾取され、虐げられてきた女性。

子供を産めば(父親に触れられていないのでそれも自分の意志ではない妊娠だろう)取り上げられ、嫁という名の奴隷として働かせ、性のはけ口にされるために微々たる金額で売り飛ばされる。

そんな中でも神を信じて耐え忍ぶ。

ゴスペル系の音楽がベースになるミュージカル作品なので、全般を通して信仰や愛、赦し、多分に宗教色は感じられるのだけど、現代の私たちにとってはもっとシンプルに「1人の人が自身の尊厳を取り戻し、立ち上がり、再生していく物語」だ。

現に、感動的クライマックスは用意されているけれど、私の中で最も心震えたのは、実は主人公が連れられて初めて都会に出て、映画館のチケット売り場で「いらっしゃい」「楽しんで」と声をかけられたシーンだったから。

この時初めて、彼女は全くの他人に、他の者達と同じようにひとりの人として扱われたのを目にして泣きそうになった。
それくらいには彼女の扱いは酷かった。

生まれも、育ちも、国も、人種も、性別も違う。
考え方や性質もひとりひとり違う。

それでも、どんな人でも生きている。
どんな人でも美しい。

格差が生まれたり、あちこちで炎上やマウントが当たり前みたいに横行している今、全ての人に、「自身の美しさを受け止め、尊厳を守る権利がある」と、大きなメッセージを感じる映画だったと思う。
えむ

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