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カラーパープルのYAEPINのレビュー・感想・評価

カラーパープル(2023年製作の映画)
3.8
スピルバーグの監督した初版『カラーパープル』は観たことがなく、本作の予告に1回触れただけで情報をほとんど仕入れずに鑑賞した。

それもあってか、初めの1時間半くらい、主人公の置かれた環境があまりに酷く、歌ってる場合じゃないぞ!!という気持ちになってしまい、なかなか没入できなかった。
身ごもった子供を2人とも取り上げられ、身売りのように子持ちの男に嫁がされ、その男には理不尽に殴られ、おまけに妹と引き離される。
その妹も、父親に身体を触られ、姉の夫にも襲われそうになり、命からがら逃げ出している。
書いてても嫌になる展開が、ものの30分で怒涛のように襲ってくる。

『哀れなるものたち』を観たばかりというのもあるかもしれないが、一刻も早くゲス男たちに復讐してほしいと思ってしまった。

その後、主人公のセリーは義理の息子の妻や夫の愛人など、男に屈しない強靭な女性たちに刺激を受け、終盤でようやく立ち上がる勇気を得る。
だが本当にラスト30分くらいの出来事なので、それまではあまりにも暴力的な不条理にただ耐え忍ぶしかない。

確かに、到底人権侵害としか言えない扱いを受け続けた人が、経済力もないまま、いきなり第三者に触発されて自分の人生を切り開けたかというと難しかっただろう。
人が削がれた自尊心を回復させ、自分自身を愛せるようになるのは、途方もなく長い時間がかかるのだと体感させられた。

主人公セリーの義理の息子を演じたコーリー・ホーキンズは、『イン・ザ・ハイツ』同様力強い快活な歌声で素晴らしかった。
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