たつやん

カラーパープルのたつやんのネタバレレビュー・内容・結末

カラーパープル(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

 様々な「強さ」の形を、ド迫力なブラックミュージックに乗せて語りきった、魂が震える名作だと思いました。
 主人公のセリーが出会う様々な悲劇が決してファンタジーでは無く、史実であることの生々しさ、実子や妹との生活が引き裂かれ、DVを超えた性加害、奴隷と呼ぶべき生活。それをひたすら耐え続ける。日付が経過したことを表す字幕はあくまでもあっさり出るのですが、「こんな生活を、もうこんな長い間経験しているのこの人は…」とゾっとするところがありました。
 そんな主人公の周りに現れる女性たち。絶望の中でも二人なら何とかなると明るい希望を持ち続け、送り続ける人、暴力には暴力を返し「NO」を突き付ける人、女性であることをあえて利用し、男性社会を乗り越える人…。そのような人達の出会いを通じ、主人公が自分らしさを取り戻す過程が徐々に徐々に、丁寧に丁寧に描かれており、そして実は主人公こそが周りを勇気づけていた、という場面は、自分に何の価値も無いんだと絶望を送っていた日々が反転する素晴らしいシーンだと思いました。
 そして何より、主人公が持つ「赦す」力がこの作品を名作たらしめていると思いました。自分を長年にわたって加害し続けた者を悪役として敵対しつつ、過去は過去、未来は未来と割り切ることが出来た主人公こそ、この作品で一番力強い人であったと思わせられます。
 
 ゴスペル、ブルースがふんだんに盛りこまれたミュージカルシーンも素晴らしく、「I`m here」の、我々観客をまっすぐに見ながらの「私は美しい、私はこうして生きている」というシーンには落涙してしまいました。個人的にはハリーベイリーが歌う「keep it moovin`」が、絶望を明るく耐え忍ぶ歌として非常に勇気づけられます。

 前半の女性に対する迫害のシーンが非常に苦しかったのですが、その分後半からの反転攻勢が素晴らしいカタルシスがありました。ハッピーエンドとして、ミュージカルとして非常に良い経験となりました。85年のリメイク前の作品も観てみたいと思います。
たつやん

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