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ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイのいののレビュー・感想・評価

3.8
音楽に造詣の深い方や、ビリー・ホリデー大好きな方が、この映画をどう思われるのかはわかりません。この映画のどこまでが事実で、どこからが創作なのかも、わたしにはわからないです。でも、これからビリー・ホリデーを知っていこうと思うわたしにとっては、良い映画だったと思います。仕事帰りに観たのに、いちどもウトウトしなかったし。「奇妙な果実」を歌う彼女を、なぜFBIは執拗に敵視し、陥れたのか。権力に屈せず、強くあろうとしたビリー。圧倒的な存在感とカリスマ性で、多くの人を魅了したのも超納得。ろくでもない男にひっかかり、ヤクと手を切ることも難しく。背負うのにはあまりに辛い過去。


冒頭のリンチの写真が凄まじい。そこから映画は、(あえて汚い言葉でののしりますが)白人クソババアの、ビリー・ホリデーを見おろした不愉快なインタビューから始まり、これは映画として面白くなるぞと、わたしの期待はいっきに高まりました。でも、おそらく脚本が不完全なのでしょう。インタビューから回想に入り、またインタビューの場面に戻るその転換が全く巧くない。ダレていて、微妙に中途半端。それから、もっと「奇妙な果実」に深く入り込んで欲しかった気もします。しかし、初めて演技をしたというアンドラ・デイが役を見事に演じきり、歌う場面も圧巻でした♪ バックで激しく突かれるセックスしかなかった彼女が、ふたりで向きあっての いたわり合うようなセックスになったことが、彼女が愛を知る象徴として描かれたのも良かったと思います。そしてエンドロールでのプラダの話は、そういうことだったのかと。映画「SWEET THING」を観たことで、ビリー・ホリデーは気になる人になりました。劇場鑑賞を逃してしまったドキュメンタリー映画が配信されたら是非とも観たいと思います。



〈追記〉2022.04.20
冒頭のリンチの写真で、「それでも夜が明ける」を観たときの感情が、うわっとよみがえりました
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