ゆーさく

14歳の栞のゆーさくのレビュー・感想・評価

14歳の栞(2021年製作の映画)
3.5
とある中学校の三学期、「2年6組」のクラスメイト35人に密着したリアリティ映画。

多種多様な14歳の心境を、インタビューや学校生活の映像を交えて、クラスメイトひとりひとりにスポットを当てながら描いていくドキュメンタリーな作り。


"この映画に登場する生徒たちはそれぞれの人生を歩んでいます。SNSなどによる個人に対するプライバシーの侵害や、誹謗中傷はご遠慮ください"

っていうテロップが冒頭と終わりの2回入ってたの印象深い。気遣われているな。



今回の映画、カメラが回ってる教室や運動場での生徒たちのやり取りって本当の意味で素なのかな?ってちょい疑問がまずあった。

隠し撮りじゃなく、カメラがあることを撮られる側が知ってる状態やと、
演じてるとまでは言わなくても、多少なりともテンションが上がったり、やや気持ちを盛ってしまったり、

あるいは逆に、カメラの前でハシャぐ奴と思われたくなくて普段よりも大人しくしてしまったり、斜に構えてしまったり、、、そういう自己演出をしてしまったりはしないだろうか?


この映画の生徒たちの映像はリアルやし切実やしホンマは疑う理由なんか無いんやけど、それでもそこにカメラがあった、撮影者がいたんだっていう事実は含めながら、俺はこういうドキュメンタリーを観る。

インタビューの言葉とかも、リアルな感じはするけど、生徒らの言葉全部が全部、必ずしも本心じゃないと思ってる。


だからきっと、そこ含めての映画なのかもな。カメラが回ってて記録されてる状態での14歳を見せる。っていう。

この映画がドキュメンタリー映画じゃなくて、リアリティ映画って名乗ってるのはその辺のアレなんかな。
「そりゃ演出はあるよ」っていう作り手の意思表示なのかも知れん。もしそうなら誠実やな。



観ててグッと来る瞬間はあった。

休み時間机に突っ伏して誰とも喋らないような子が、家ではお菓子作りに励んでるとか。

そういう周りのクラスメイトたちが普段知ることの無い一面みたいなのを描かれると、なんか涙腺にきてしまうね。
人物の厚みみたいな、奥行きみたいなのを感じられて、血が通ってて、なんか暖かい気持ちになる。



生徒一人ひとりのインタビューの内容は、自己演出も多分に含まれてるとは思うけど、それも含めて価値のある資料だと思う。



あ、重松清の書く中学生ってこんな事言いそうやな、ってずっと考えながら観てた。
だからかな、この映画がリアルとフィクションの合の子のような感じがしたのは。
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