ゆーさく

碁盤斬りのゆーさくのネタバレレビュー・内容・結末

碁盤斬り(2024年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

人情小噺って感じでゆったり楽しめたけど、けど、けど、

なんか登場人物たちの筋の通し方ってのがいまいち共感出来なかったな。どういう心理でその行動に出た?って思う点が多かった。

主人公の格之進、50両盗んだ嫌疑を掛けられたからといって娘を売った50両で返済する事が一体どう落とし前つけた事になるのか?
むしろ盗みを認めた行為と周りに思われてしまうのではないか?
格之進はもともと信頼のある人柄なのだから「盗ってない」の一点張りで良かったろうに。

弥吉が格之進に50両の行方について尋ねたのは、番頭の徳次郎が格之進を疑ったからであって別に弥吉の意志じゃない。
なぜ最初から弥吉は格之進に「僕が疑ってる訳ではなく、番頭の徳次郎が聞いてこいと言うので来ただけです」と一言添えなかったのか?
あれで弥吉と柳田家の関係、変に拗れたよな。

格之進が怒りに駆られて弥吉に「俺が犯人じゃないと分かった時にはその首を貰うぞ」と凄むのは心情的には納得出来る。
誇りを傷つけられたのだからそれ相応のモノを差し出せって話。

でも弥吉はなんでそれに乗ったのか?

だって弥吉は別に格之進を疑ってないわけで。疑ってるのは番頭の徳次郎だけなわけで。ましてやその場にいない主人の萬屋源兵衛の首まで一緒に賭けてしまえるなんて意味が分からない。弥吉の心情に筋が通ってない。

本来、番頭の徳次郎 VS 格之進、というシンプル対立の筈なのに、変に弥吉という代理を立てたせいで、おかしな筋になってしまってる。


クライマックスの囲碁対決の際、敵役の兵庫が
「フッ…彦根藩一の俺に勝てると思ってるのか」とか言ってたけど、たしかコイツは回想でも格之進に負けてたはず。(正確には負けそうになって途中で勝負投げてた…カッコ悪い…)
やのになんで、そんな自信あるのか謎やった。

どうせなら格之進は兵庫には一度も勝ったことが無い、っていう設定でやってくれた方が、兵庫のセリフにも筋が通るし囲碁対決自体も熱い展開になったんじゃなかろうか。

あと兵庫は、かつての格之進の仕事に対して「水清ければ魚棲まず。お前の清廉潔白さのせいで職を追われた同僚が何人もいる…」とかなんとか言うて、自分のやった事をそれっぽく正当化してたけど、実際にやった事が外道で性根腐ってるから説得力なかった。
何言われたところで全然入ってこない。
兵庫はもうちょい筋通った役にした方が、その点にメッセージ性や葛藤が生まれて良いドラマになったかも知れん。




心のゆらぎが囲碁の打ち方に表れる、ってのは趣深くて良いね。
心が荒れれば碁も荒れる。ヒカルの碁よく読んでたんで。そういうのグッと来る。

その意味では、物語前半の國村隼演じる源兵衛の心情変化が、一番ドラマチックでグッと来たかも。囲碁を通じて人間的に成長していく姿。
汚かった打ち筋を改めると共に真っ直ぐな心根を取り戻していく、その過程が上手に表されてて、感動出来た。
ゆーさく

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