ゆーさく

鳩の翼のゆーさくのネタバレレビュー・内容・結末

鳩の翼(1997年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

恋愛において、策を巡らせた結果、誰も幸せにならなかった三角関係の話。

強権的な伯母の元で暮らす没落貴族の娘ケイトは、新聞記者マートンとの結婚を望むが、身分の差を理由に伯母に反対される。

その後、パーティで出会った米国人貴族ミリーと友人関係となるが、偶然、そのパーティに同席していたマートンを、ケイトとの事情を知らないミリーが気に入ってしまう。

実はミリーは長年病に侵されており、もう長くは生きられないという。
それを知ったケイトは、マートンとミリーを恋愛関係にさせて、ミリーの遺産をマートンに相続させることで身分の差を埋めて、ミリーが死んだ後に自身とマートンの結婚を実現させよう、という策略をマートンに持ち掛ける。


善良なミリーを金蔓のように利用するこの計画を、ケイトとマートンは罪悪感に苛まれながらも実行するが、計画は苦い結末を迎えることになる。。。


もともとケイトもマートンも財産が欲しいわけじゃない。それが観てて心痛いところ。
二人は決してミリーの財産狙いで仲良くしてるわけじゃなく、ちゃんと友人として愛してて、でも結婚するために他の術が浮かばなくて、ある意味追い詰められて暴走してしまったのだ。


結局、自分の愛に正直であり続けたミリーが三人の中では一番幸せだったのかも知れない。マートンの本当の愛を得たのは最終的に彼女だったわけで。
たとえ病魔に侵されて短い命だったとしても、ある意味で念願を成就させたのは彼女だけだった。


ミリーは亡くなり計画通りマートンに遺産を託すが、マートンは遺産を受け取らなかった。
最初は利用するためにミリーに近付いたけど彼女の素直さと情愛の深さに触れて心を変えられてしまったのだ。

いまやマートンはミリーを愛していた。しかしもうミリーはこの世におらず、マートンは喪失感に苛まれる。
ケイトもまた、親友を騙しその親友を失った喪失感に苛まれ、去っていくマートンを引き止めはしなかった。

マートンがミリーとの思い出の地ベネチアを訪れるシーンで、この映画は幕となる。


狡猾にあろうとするけれど、なり切れない。願望を捨てられず、でも貫けもしない。終始心揺さぶられ続けるケイトを演じたヘレナ・ボナム=カーターの細やかな感情表現がお見事だった。
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