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Arc アークのyuu223のレビュー・感想・評価

Arc アーク(2021年製作の映画)
3.6

この映画は面白いかどうかよりは
「好きか嫌いか」に尽きる、
なかなか観客を突き放す作品です。

アメリカで活躍する中国出身の
SF作家ケン・リュウの原作を
脚色するかたちで映画化された
とのことですが
SF好きは首を縦に振らず、
私のようなSFが苦手で
ヒューマンドラマ好きには◎

世界ではじめて
不老不死の身体を手に入れた
女性の一代記。
冒頭から設定は現代?過去?
未来?といった具合で
SF特有の未来描写が皆無で
さらには古いドアの鍵、レトロな
ロッカー、IT設備のない会社、
古い形式の記者会見…

「もしかしたら未来はこんなのかも」

とも思えてしまう描写が続きます。
が、チープ感を感じさせないのは
効果的なモノクロ映像など
石川慶監督らしいスタイリッシュで
美しい撮影手法かなと。

鑑賞目的のもうひとつは
芳根京子ちゃん。
先日、Amazonプライムでようやく
「ファースト・ラヴ」を鑑賞したの
ですが、久しぶりの原作潰しの
残念感からの一筋の光が彼女の
お芝居でした。

この作品ではビジュアルを変えずに
90歳超を演じなければならない
難しい役どころでしたが、眩いほどの
美しさと脇を固める俳優さんの
「受けのお芝居」の素晴らしさも
相まって、スクリーンのど真ん中で
堂々とした存在感。
衣装のCASA FLINEのドレスも
素敵でうっとり✨

とわ子ロスの状態で
岡田将生くんと風吹ジュンさんの
お芝居にも胸アツ。
特に風吹ジュンさんと小林薫さんの
夫婦役は古き良き向田作品のようで
とても見応えがありました。

ほかも下手な役者が出ておらず、
キャスティングが良いのも
石川慶監督の作品ならでは。

不老不死が決して遠くはない
ギリギリの現代に
この映画で未来に触れることで
人の心はどう震えるのか。

「人間は進化したのか
退化したのか、どちらなのかしらね」

「季節が移ろい、時が流れてるこの島で
(不老不死の)自分が取り残された気持ちになる」

「死は生の対局としてではなく、
その一部として存在する」

印象的な言葉とともに
視覚的なメタファーもたくさん。
決して派手ではないけれど
ただただ暗くて湿っぽい日本映画
らしからぬ1本です。

丹下健三氏の香川県庁や
小豆島などロケ地も美して素晴らしい。
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