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獅子座のkurageのネタバレレビュー・内容・結末

獅子座(1959年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

星占いによると、獅子座の男性は、宵越しの金を持たないタイプが多いのだそうだ。知り合いの獅子座の女性は、お酒を飲むと、財布の中身がどうであれ、パアッと景気よくお金を使うタイプではある。それは星座よりも出身地が関係あるような気がしていた。でも、音楽と酒とダンスを愛するチャーミングな彼女は、同じ獅子座の主人公、ピエールにちょっと似てるところがある。

ピエールはパリに住む売れない作曲家で、トコジラミが侵入したらなかなか取れなさそうな胸毛がある大男だ。そんな彼が叔母の遺産を相続することになったと知らせを受けたことから物語は始まる。
ピエールがホームレスになっていく過程で、あてどなく街を歩いている姿を遠巻きにカメラが撮影している。どん底に落ちていくピエールを冷静に捉え、そのくだりが長々と続くものだからもうこの辺でやめておいてと思う。バカンス時のパリという背景が悲しい。ピエールの友達が誰もパリにいない。容赦ない転落具合だ。

その姿に、これまで街で見かけた人たちと重なって胸が痛くなった。最初はピエールにも「自分はホームレスじゃない」というプライドがあった。座ることで止まってしまうから、歩き続けなければ、という気迫が感じられた。だが、洋服が汚れ、空腹に襲われ、寝るところもなくなると気力も衰え、途方に暮れて彷徨うしかない。行き倒れたところから、運命のイタズラが始まる。これが運気の変わり目。偶然が重なって今度は倍の遺産が手に入るが、本人の言動は以前と全く変わっていない。唯一の救いは、友人が良識的であることか。さて、続きの人生はどうなるかー。

ロメールはバカンスと星座をよくモチーフに使うが、バカンスに何か特別な劣等感でもあったのだろうか。占星術はきっと好きだったんだろうな。ちなみにロメール自身は牡羊座だったらしい。
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