このレビューはネタバレを含みます
誰にも聞こえない周波数52ヘルツで歌う世界一孤独なクジラをモチーフに、DV、LGBTQなどで声を上げられない人たちを描いている。
杉咲花演じる主人公、貴瑚をはじめ、辛い環境に身を置く人たちがそっと寄り添い合う姿に、これ以上のことは起きないでほしいと願ってしまう。
母親にムシと呼ばれ、捨てられた少年が失くした声を取り戻すまでーそれがこの映画の全てで、希望だと思った。
やさしさの裏側にあるもの、傷ついた経験を持つ人の温かさ、懐の深さ、だけど人間だから嫉妬もする。でもそれは支配欲からくるものではなく、相手を思う気持ちの強さと自分の小ささから生まれて来たもの。
アンさんの心情を慮ると心が痛くなる。
過去から現在に遡る回想&現在で構成されており、複雑そうに見えるが時間軸が混乱することはなかった。
演者の心の揺れを表すためかスクリーンが揺れ揺れしていたので、『エゴイスト』以来、またしても宮沢氷魚のアップシーンで酔ってしまいました。