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偶然と想像のnt708のネタバレレビュー・内容・結末

偶然と想像(2021年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞して以来、公開を待ち望んでいた本作をようやく観ることができた。受賞が決まってから『ドライブ・マイカー』を先に観ることになり、その出来が良かっただけに本作にも期待していた。しかし、期待していたほど面白くなかったというのが正直な感想だ。

まず本作はいささか台詞に頼りすぎている。裏を返せば、映像の力を信じておらず、こういう演出の仕方をするのであれば映画である必要もない。会話の詩性から言えば、むしろ舞台として作ったほうが面白くなっただろう。

それに肝心の台詞もあまりに詩的で、発する言葉の意味がそれでしかないように感じた。本来人間は自分の言いたいことを言わずに相手に感じ取ってもらうことをする存在、あるいはその努力をしてもそこに達することのできない存在。しかし本作の言い回しは意図があからさま過ぎて聞いていてあまり面白くない。一時的に面白くなっても、それが続かないのが残念なところだ。さらにそのあからさまさ加減から劇場で笑いの起こったシーンも割と早い段階でこうなるだろうと予測がついてしまい、正直あまり笑えなかった。これまた残念。

面白さの連鎖が生まれないのは、意図的にやっている感情抜きの演出が作品のテンポ感を損なっていることが最大の原因だろう。ああいった演出は観客に対して解釈の余地を残すし、人間とはこんなにも言葉が通わないものかと思わせられるのだが、こういった演出はかつての映画でもやられてきたこと。新しいことをやっているようで、実はそんなに新しいことをやっているわけではないのである。

総じて、本作は私の好みではない。期待値が高かったために尚更そのことが残念でならない。これだけ高く評価されている映画を観てそのように感じてしまうのは、私の見方に何か問題があるのだろうか、、終ぞわからぬ。
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