ギルド

ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう/見上げた空に何が見える?のギルドのレビュー・感想・評価

4.9
【閉じた社会の集合体でも偶然と必然で変われる】【東京フィルメックス】
一目惚れした男女が謎の力で別人になった姿を追うラブロマンス映画。

東京フィルメックスで注目していた作品で、これが想像を大きく上回る傑作でした。
物語の推進力も面白くて、絵面も美しくて、でもどこか作為的かつ戦略的かつ遊び心満載で凄く面白かったです!

まず、この作品の特徴として足元しか映さない(+体の一部しか映さない)があって新鮮でした。
ボーイ・ミーツ・ガールものって最初の出会いは顔を映したり全身を見えるように映すのが王道だと思うけど、本作はそこから外れてる。
奇をてらう為にやってるかと言うとそうではなくて、”ある男女の出会いを映した
作品と見せかけて世界そのものを描いた作品“の必然があるから見ごたえがありました。

撮影や編集にカメラワークがどこかメタ的で演出含めて「ファニーゲーム」「デッドプール」のような整備/区画で世界の外殻を構成している。
けれども内殻は「世界はどこでも自由に行ける”開いた社会”と見せかけてコミュニティごとに分断されてる/他者の真実に無関心…という”閉じた社会”の集合体で構成される」を描いています。
社会の不条理/不明さこそ普遍的で、そこの正統性を担保するために…人間はそれでも動ける範囲で動くので足元のみ映す独特なカメラワークや編集が使われていると感じました。

これはカメラワークだけでなくストーリーラインも同様で、 別人になった男女だけではなく様々な人々のエピソードをもメタ的自虐も兼ねてストーリーラインに組まれています。
意図的につまらなくしてるのかな?と思う瞬間もあったけど、けれどもそれも世界を表現する手法とも捉えられます。
つまり世界は男女だけの物語ではなく男女と他者の物語で構成されている。
これはロングショットで撮る”世界の物語を望遠鏡で覗き込む”ような表現が見応えありました。
その全貌が明らかになった時の”点と点が繋がって面になる”爽快感が素晴らしかったです。


そんな戦略的カメラワーク/ストーリーラインだけではなく、画作りも単純に見惚れる瞬間が数多くてそこも素晴らしかった!
ジョージアを舞台に街や自然を映しているけど、そのどれもがカラッとした自由奔放な感じで美しいです!
この映画だとオレンジ色、濃い青緑色で構成されていてそこの使い分けも「アメリ」ぽさがあったと思います。
開放感ある建屋や扉の開閉にも本作のテーマが盛り込まれているけど、それらを引っくるめてジョージアならではの自然の壮大感&グルジア語に照明のファンタジー感が一体になっていて見とれました!


奇しくも「偶然と想像」の”偶然”を扱った作品ながらも、”偶然と必然が共存する”様を描く遊び心溢れた傑作です。

ここにも偶然の摩訶不思議な、でも人生を変える途轍もない力が内包する凄みがあるのでその顛末は映画を見て欲しいです。
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