ヒノモト

白い牛のバラッドのヒノモトのレビュー・感想・評価

白い牛のバラッド(2020年製作の映画)
3.9
死刑にされてしまった夫の冤罪の物語。

イランという文化的背景が分かりにくい国で制作された作品で、終始息苦しい感覚で観ていたのですが、シングルマザーとなった主人公が、賃貸契約すらできない実情や、もちろん死刑制度そのものや宗教的な乖離もあってか、完全に物語に寄り添うことはできないまでも、結末に待つ苦しみは、幼い子供を抱えてのこともあって、生きづらさを感じました。

ただ物語としては、夫の旧友として近づく中年男性レザの正体は、観客側には早い段階で知らされてしまう分、この結末がハッピーエンドを迎えないことは承知しながら、静かに進行する展開はちょっとヤキモキさせるし、結末としての意外性も少ないので、映画としての面白みとしてはあまり高くはなかった印象でした。

映画の最初と最後に映し出される白い牛が象徴的で、死を捧げる隠喩として意味深いのですが、どこまで傾倒できるかは、観る人の立場によって感じ方によって異なるので、一概には言えないが、その一端は伝わる作品ではありました。
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