うかりシネマ

ボーはおそれているのうかりシネマのネタバレレビュー・内容・結末

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

母の死を知ったボウは葬儀のために実家に帰ろうとするが、交通事故に遭い、その加害者の家に軟禁されてしまう。
家を目指すボウだったが、過去と現在が入り乱れ、未来の自分まで見え始め、夢と現実の境目さえもなくなっていく。

ジャンルはスリラー・コメディだが、ただ明るいだけのホラーというか、怖いからこそただ笑えるというか、その境界線すらグラデーションでぼかされている。
とにかくさまざまなパターン、さまざまなジャンルの“厭”がボウに浴びせられ、気が滅入るよりもどんどん笑えてくる。
車で6時間ほどの距離なのに家まではなかなか辿り着けず、舞台は移り変わる。子供の頃の記憶や未来の話が挿入されるが、混濁させるわけではなくあくまで「家に帰る」という本筋を優先させているので濃さのわりに見やすい。
映像的な表現は面白いが、この手の……要するに『ジョーカー』のような信頼できない語り手ものというのはラストで正常(現実)に戻るか狂ったままでも面白くあるべきだが、本作では精神世界のまま終わるのでどう決着がついたのか、どこまでが事実なのか分からず(おそらくここだろうというポイントはあるが)、投げっぱなしにしかなっていない。その終わり方が許されるなら馬鹿でも映画が作れるわけで、一本の映画としては微妙。
出産から始まるので羊水=母の庇護で終わるが、現実は「母の死」で終わっている(母は神視点を持っていなかったので裁判だけが妄想)、胎内回帰したいのに母親がもういないので暗闇の中でバッドエンド、ということだと思うが……これを説明せず観客に考えさせたところで面白くないので困る。

無修正の陰茎が見られて喜んだのも束の間、セックスのシーンでは『ミッドサマー』を思い出させる特大モザイクがあって萎えた。日本の映画配給会社の黄色い猿どもは芸術が理解できないままらしい。
タイトルでは「ボー」なのに字幕で「ボウ」となってたのは、どっちが正しいんでしょうか。