Punisher田中

ボーはおそれているのPunisher田中のレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
3.9
不安障害を抱えるボーは母に会いに行くその日に空港チケットを失くしてしまうのだった...パニックに陥るボーだったが、ボーの元に更なる不幸が遅いかかる....
「母が死んだ。」

12/20のQ&A付き試写会にご招待いただき鑑賞しました!
生のアリ・アスターがイカれた会話をしているだけで至福...必死に手を挙げたけども質問したかった...

3時間にも及ぶ悪夢と映像に堕ちることの気持ち良さを味わい尽くせる怪作。
やっぱりアリ・アスターは凄い。
今作は前2作ほど整えられたものではなくてアリ・アスターの表現したい!を詰め込んだモンタージュ的な作品であるにもかかわらず、骨子は凄くしっかりしている不思議。
ボーvs毒親でもあれば、彼が彼自身・世界に蔓延る恐怖を乗り越える旅とも云える。
解答を複数にする、質問を大きくするということを今作でアリ・アスターはやって除けているが、3時間の大ボリュームでそんなことをやって除けようと思うのは彼以外には正直考えられない。異常だ。
それなのにダレずにひたすら質問に対して解答の幅をどんどん増やし、気づけばその異常性に我々が逆に飽きてくる始末。
彼の異常性は残念ながら今作では未だに天井を迎えておらず、終盤の余裕っぷりを観てしまうとその狂気と異常性はより天高く遥か高くに天井があるに違いない。残念ながら今作はアリ・アスターの原液ではなく、原液を水で割った様な物だろう、水割りだ。

今作の様々な事象にいちいちネチネチ説明をする・説明を求めるのは野暮で、ただこの世の不条理を煮詰めに煮詰めた映像が次から次へと流れ込んでくる異質さを体感し、心身を痛めつけることを楽しむドM向きの作品だと考えるべきだろう。
分割された世界を出入りし、その世界での""最悪""をしっかり体験するボーの悲壮を緩和と緊張を駆使して最悪過ぎるけど最悪過ぎないエンタメに落とし込んでいるのはビックリでやっぱり観やすい物を提供している様に感じる。
彼をより知りたい、より苦悩したい!そう感じる作品だった。次回の作品も楽しみにしています!