ヨーク

ボーはおそれているのヨークのレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
3.5
早く『FF7リバース』の続きをやりたいのでまずサクっと結論を書くと、大して面白くなかったです。先日感想文を書いた『ここに幸あり』からハシゴしたのだが、早く家に帰って『FF7リバース』の続きをやりたかったので本作を観るかどうかは結構迷っていたのだが、結果としては観ずに家に帰った方が良かったなとさえ思ってしまった。
その理由というのは本作『ボーはおそれている』の監督であるアリ・アスターの前作である『ミッドサマー』の感想文で書いたこの映画つまんないよという部分とほとんど同じなので詳しくはそちらを読んでくれ、と言いたいが、まぁかいつまんで言うとよくある作風かつネタで中身スッカラカンの張りぼて映画のくせに意味ありげな(本当は何もないのに)暗喩だけを散りばめただけで、それだけでつまんねぇなぁとなるのに事もあろうに3時間という長尺でいつまでたっても終わらなかったのでこれはもう大して面白くねぇなと言う外はない映画なのです、少なくとも俺的にはね。今書いた文句は大体『ミッドサマー』の感想文でも同じことを書いていたのだが、その感想文を見直してみるとちょっと面白かった箇所があったので引用してみる。“この映画を観て俺はかつて『新世紀エヴァンゲリオン』に対して「あんな作品は空虚で空っぽなものだ」と言った当時のまともな大人たちの気持ちが分かりましたよ。エヴァもコアとなる庵野秀明の私小説といった部分以外は借り物の張り子だった。”ということを『ミッドサマー』を観た当時の俺は思ったらしい。これは興味深いね。というのも本作『ボーはおそれている』という作品はアリ・アスター監督の私小説的な部分が随所であると思われる映画だったからだ。ただ、それでもエヴァと違ってグッとは来なかった理由というのは作品を観たときの俺の年齢(テレビ版エヴァは十代半ばで見た)もあって、それは結構大きな比重を占めている気もするのだが、しかし私小説としてこの映画を観ても庵野の赤裸々でヤケクソな勢いなどはとてもなくて、いい意味でも悪い意味でも普通の映画だったのでそんなに面白いとは思えなかった。
あらすじは詳しく説明すると本作のように無駄に長くなってしまうので適宜端折って書くと、主人公であるボーさんは病名とかがあったかどうかは覚えていないが神経症気味で不安障害バリバリなな感じの中年男性で、実家に帰って母親に会おうと思ってたけどアクシデントが重なり飛行機に乗れずに断念、また日を改めようかと思っていたら昨日まで元気だったはずの母親が死亡したとの報せが! そこからさらにひと悶着あり全裸のままで家を飛び出したボーさんは実家へと向かう! というものですね。
まぁ変な映画だよね。何をもって変とするかは人に因りけりだろうが全裸の中年男性が同じく全裸の殺人鬼に追っかけられながら帰省しはじめるという映画は中々変な映画だと言ってもいいのではないだろうか。実際その冒頭のシーンは面白かったんですよ。ボーさんが飛行機に乗りそびれたと思ったら母が死んでて転がるように全裸のまま帰省スタートってなる辺りまでは。でもその後3時間という長尺を使ってこれでもかというほどに変なシーンばっかりが続くので、端的に言うと飽きるんですよね。変なシーンっていうのは普通なシーンに紛れて挿入されてくるからこそ、その変さというのが際立った異常なこととして面白く観えてくるんだけどこの映画ずっと変だもん。そうなるとその変さに慣れてそれが普通になっちゃうんだよ。要はカルト映画的な作風というのを狙い過ぎて滑っていると俺の目には映ったわけだ。最初に、よくある作風とネタ、と書いたがそういうカルトウケを狙って失敗してる作品とかいっぱいあるでしょ、俺には本作もそれと同じように思われたわけです。さらに言うと前作『ミッドサマー』も同じような印象だったので、また同じことやってんのかよ、というウンザリ感もあった。しかも『ミッドサマー』よりも長い尺を使ってね。俺的には映画そのものよりもそっちが一番つまんなかったかな。上記したように導入たる最初の15~20分は面白かったしラストの15分くらいも面白かったんだけど真ん中の部分がかったるすぎましたね。100~110分くらいでまとめてくれていたらもっと違う印象になっていたと思う。
あと本作はアリ・アスター自身の私小説的な作品でもあろうと思うが、そこも何か綺麗にまとまり過ぎててグッと来なかったな。自己を投影した映画っていうのはもっと混沌としていて破壊的(自傷的と言ってもいい)で監督自身でも自分が何をやっているのかよく分からないというくらいの勢いを観せてほしいのだが、本作は普通に作品としては良くコントロールされているのでそういう意味不明な勢いというのもなかった。恐らく「ヨブ記」はベースというかネタ元にあるのだろうが、そういうモチーフを上手く入れて全体の構成をしっかり作っているあたりが何かもう違うんだよ。庵野は『EOE』で「キリスト教要素とか何となく入れたけどあんなん全部ネタだから…本気にすんなよ…」とゲロってくれたというのに…。
そんな感じなのであんま俺はノレなかったですね。とは言っても別にクソ映画とかでは全然なくて、シーン単位で観れば面白い箇所はたくさんあったのでまぁまぁ面白かったくらいには落ち着くのだが、早く帰って『FF7リバース』をやりたかった(そしてこの感想文を書いている今もやりたい!)という気持ちは拭えないので、あくまでも個人的にはやや低めのスコアです。
今のところはアリ・アスターは『ヘレディタリー』が一番面白かったかなぁ。それ以降は宣伝こそ上手いけど内容は…という感じですね。本作のように3時間とはいかないがそれでも145分という長尺で尚且つ意味不明なシーンばかりが連続するのにちゃんと面白かった『マルホランド・ドライブ』が如何に凄い作品だったのかということを再認識しました。そうだなぁ、尺が長いのは難点だが自宅で友人と飲みながら突っ込みつつ見たら結構面白いんじゃないかな。あんま本気で持ち上げるような映画ではなく、あくまでB級映画として見れば面白いと思いますね。そんな感じでした。
よし! 『FF7リバース』再開します!
ヨーク

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