七月

ボーはおそれているの七月のレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
4.5
自分がアリ・アスター監督作品のファンということを差し引いても、とてもとてもとても好きな映画でした。他者や世界に対して漠然とした恐怖を感じている人は共感するところが多い作品だと思う。
1月末に試写で観させてもらえたのだけど、好きすぎると感想を書きたいという気持ちがわかなくて2ヶ月も経ってしまった。

主人公のボーが抱える内的な問題を、客観的強制的に突き付けて、向き合わざるを得なくさせるパワー系セラピー映画。母親の家に着いてからの怒涛の展開が痛々しくて、でもボーと似たような精神状態を抱える観客にとってはなにを言わんとしているかピンとくるところがあるのでものすごく「痛気持ちいい」展開でもある、と感じた。
ボーが逃げようとしても逃げられないのはそれが彼の過去であり、彼の人生だからで、その不安や恐怖から抜け出すには逃げるのではなく過去や痛み、目を逸らし続けていた自分自身に向き合い、自己変容を遂げるしかない。そういうことをボーを通してずっと突きつけてくる。うわ〜痛気持ちいい!
ラストが本当に良くて、ボーの何かを決意したような表情と水に還る展開は、一見後味が悪いようでいて「自分の内的な問題を受け入れて生まれ変わる」という希望を暗示しているように見えた。
七月

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