七月

オッペンハイマーの七月のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.8
プロデューサー(というにはちょっとした関わりみたいだけど)の問題発言があったり、炎上もあったのでこの映画にお金を払うことに躊躇していたのだけど、結論としては観てよかった。伝記映画が好きなので、一人の人間を3時間ぎっちり濃密に描いたこの映画はとても見応えがありました。

伝記映画なので、オッペンハイマーの人となりを丁寧に描いた人間関係が一番の見どころだと思う。特に、知的なコミュニケーションに値しないと一方的に判断した相手(普通に善良そうな人たち)をあからさまに軽視する人間性を何度も見せて、過度な感情移入を防いでいるのがよかった。こういう人には親しみを感じないですよね、人情としては…。見下しや身勝手さに足を掬われるし、窮地に立たされるのが天才であっても人間という感じがして面白い。
物理学や核兵器の知識は必須じゃないです。現在と過去が入り乱れるので、オッペンハイマーの生涯をざっくり頭に入れておくと時系列がわかっていいと思う。

オッペンハイマーに同情的に描いているとは思わなかったです。
とある事件が起こった時に、ある人物が苦悩するオッペンハイマーを突き放すセリフがあり、このセリフは犯した罪に対する作品全体のスタンスでもあるんだろうなと受け止めたので、観ていて苦しくなるシーンはあるけど反感は感じませんでした。
むしろ、彼の苦悩に同情する必要はないと観客に繰り返し伝えているように感じました。彼が悪人だからではなく、疑いようのない罪があり、それを背負っていく責任があると考えているからだと受け止めました。

個人的にベストアクトはキリアン・マーフィーでもRDJでもなく、トルーマン役のゲイリー・オールドマンでした。
トルーマンはオッペンハイマーの言葉に、自分の中にある巨大な罪悪感を突きつけられてしまったんだな、だから大統領と科学者という立場の違いがある相手に対して、こんなにも反応するんだな、ということを短いセリフと表情で強烈に感じさせる表現力が、すごいな…(ド素人の感想)と思ったシーンだった。エンドクレジットで初めてゲイリー・オールドマンだと気づきました。
あとラミ・マレックのおいしすぎる役柄も、ストロースと対比されるキャラクターという意味でもとてもよかった。
七月

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