七月

アイダよ、何処へ?の七月のレビュー・感想・評価

アイダよ、何処へ?(2020年製作の映画)
3.8
2万人の避難民が基地に押し寄せる光景や、避難民を取り囲む装甲車、武器を持った暴力的な兵士、なすすべなく連れて行かれる避難民、強烈な差別意識。残酷な行為とものすごく晴れた夏の青空のコントラストが恐ろしく、酷かった。
物語の中心は主人公と家族だけど、主人公が基地の中や外を奔走することで、その周りに映る大勢の避難民の存在も意識することになる。あの場所にいた誰もが、主人公のように家族を守るために必死だったのだろうと想像させられた。
それから、交渉人の女性や、国連軍の女性兵士、母親と引き離される少女に対する兵士の暴力性は、この紛争で行われた女性に対する重大な戦争犯罪への目配せにもなっているところも良かった。

見た後でボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の概要を調べて、バルカン半島の歴史や民族対立の構図、劇中でも描かれるNATOや国連軍の決定の理由もなんとなく見えてきたので、気になる人はネットで調べてみるといいかも。たった30数年前の出来事なので、動画も資料もたくさん残ってるので。
七月

七月