七月

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎の七月のレビュー・感想・評価

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
3.2
大絶賛とまではいかなかったけれど、色々なレビューに書かれているように『墓場鬼太郎』に繋がるオリジナルストーリーを描いた意欲作だと思った。
個人的にめちゃくちゃ『犬神家』オマージュなあのシーンはテンションが上がったし、日本の昔の文学や映画にあるおどろおどろしさをうまく表現していてとても好きだった。逆にその雰囲気が好きだから、妖怪やキャラクターが出てくるシーンで「鬼太郎」に引き戻されてしまって没入しきれなかったのかもしれない。東映アニメーションで金田一耕助シリーズをアニメ化してほしい。

水木しげるといえば戦争体験で、それに基づいたシーンをしっかり差し込むのもよかった。実体験からくる戦争のしょうもなさ、愚かさ、戦後もそこに囚われ続ける残酷さが描かれていた。
(感想は個人の自由だけど、戦争体験の表現に対して「自虐史観」というレッテルを貼って歴史を知ることから逃げるのはダサいと思う。)

ここからただの妄想なのだけど、水木の耳の欠けから去勢した野良猫の印を連想してしまって、水木の若くて美しい女性からのアプローチに下心を抱かない、現実世界を見ているとある意味リアリティがないとも思える「真っ当な大人感」の理由はそこなのかもしれないと思った。
その仮説をもとにあらためてエンドロールを思い出すと、彼があの行動に至った理由に別の側面が生まれてくる。
ただの妄想だけど、個人的にわりと好きな仮説なのでメモしておく。
七月

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