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悪い奴ほどよく眠るのikumuraのレビュー・感想・評価

悪い奴ほどよく眠る(1960年製作の映画)
3.7
【顔芸の極致】
土地公団の汚職を巡り、副総裁の秘書にして婿になろうとする西(三船敏郎)と副総裁の娘(香川京子)の披露宴で、文字通り役者が揃う。
ガサ入れの情報が入りうろたえた表情の幹部たちと、めでたい席なのにクールで緊張感を漂わせた西、
そこに到着するウェディングケーキにはある仕掛けがあって、幹部たちの顔はさらに蒼白に。
なんてカッコいい序幕!

国家という巨悪に立ち向かう個、ということで、
ハムレットを下敷きにしたところがある、とも言われているけど、
たしかに主人公が本当は何を求めているか、自分でも分かっていない、
しかしそれゆえに人間的な魅力を放つ、というところがよい。
ただ、個人的には「自分がどういう人間か」を三船敏郎に喋らせすぎ・・・
とも思ったし、その結末に持っていくために不自然な展開になっている気もしたけど、
圧倒的な画面の力!
黒澤映画全てに言えるとはいえ、「日本映画でこんなカッコいい絵を撮っていたのか・・・」
という驚きを新たにするし、ハリウッドに影響を与えたのも頷ける。

そして役者たちの顔芸よ。
副総裁があの浮き雲のクズイケメンを演じた森雅之とは言われても「誰??」ってなるし、
志村喬の小物ぶりはムカつきつつも楽しいし、
西村晃の自ら抱える悪に返り討ちに遭い押し潰される感。
そして何より三船敏郎のヒーロー感。
やはりあの圧倒的な存在感と生命力がないと、あの役は持たないだろうな・・・
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